暁 〜小説投稿サイト〜
アドリアーナ=ルクヴルール
第三幕その二
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第三幕その二

「夜の紫の空を照らす月よりも。貴女はあまるで月の女神のようだ」
「月の女神。それはヘレネでしたわね」
「はい。アルテミスである場合もありますが。貴女はまるでそのヘレネのようです」
「ヘレネですか。いつもながら良い例えですこと」
 彼女はそう言って席を立った。そして鏡の前に来た。
「神々の命は永遠のもの。そして恋の歌も永久に歌われますわ。けれど」
 彼女は自分の姿を見た。他の者が羨むような美貌である。
「人の命は限りあるもの。人は神ではないのですから」
 彼女は憂いを込めた声でそう言った。まるでこの世の儚さを知っているように。
「私の言葉はお気に召しませんでしたか?」
 僧院長はそんな公爵夫人の様子に少し困惑した顔になった。
「いえ、そうではありませんわ。僧院長のお言葉にはいつも感謝しています。私のような者に有り難いお言葉を。ところで一つお聞きしたいのですが」
「はい」
「私のスカート、少し短くはありませんか?」
 そう言って自分のスカートを僧院長に見てもらう。
「別に。適度な長さだと思いますよ」
 僧院長はスカートを見て彼女に言った。
「そうですか。では胴のところは?太くなくて?」
「いえ。申し分ありませんよ」
「そうですか」
 公爵夫人はそう言うと再び鏡へ顔を向けた。僧院長はそんな彼女の様子を変に思った。
「あの、奥様」
「はい」
「何か御心配でも?」
 彼は気遣う顔で公爵夫人に尋ねた。
「・・・・・・・・・」
 公爵夫人は最初は答えなかった。だが暫く考えて彼に口を開いた。
「ザクセン伯の新しい恋人を探して下さい」
「?は、はい」
 僧院長はこの言葉の意味がよくわからなかった。彼女とマウリツィオのことは知らなかったのだ。
 だがデュクロと彼の話を思い出した。そして公爵とデュクロのことも。夫の浮気に心を悩ませているのだと思った。
(おやおや奥様も純情な。ご自分も楽しまれればいいのに)
 当時の宮廷ではごくありふれた話なのだから。
 だが彼はそれを口に出さずその場を去った。そしてそこに公爵が入って来た。正装である。
「よし、準備は整っているな」
 彼は広間を見て満足気に言った。
「さあ、もうすぐ皆さんが来られるぞ」
 彼の言葉通り暫くして家令に案内され広間に多くの紳士淑女が入って来た。公爵と公爵夫人は並んでそれを出迎えた。
「ようこそ、我が家へ」
 公爵は満面に笑みをたたえて彼等を迎える。その横で公爵夫人は一人一人に言葉をかける。
「いつも来て下さり有り難うございます」
 淑女達にも声をかける。
「今日もお美しくて」
 客達は席に着いた。僧院長も広間に戻って来た。
「ところでお客様へのおもてなしは?」
 公爵夫人は僧院長に尋ねた。
「アドリアーナ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ