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くらいくらい電子の森に・・・
第十章 (2)
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るような目つきだったけど、僕はそれで充分満足だった。
僕が、僕たちが大人になる日がくるなんて、思わなかった。

ましてこの事が、流迦ちゃんを狂わせるきっかけとなるなんて、カケラも思わなかった。

その事があってから3日後くらいからだったか。叔父さんたちが、流迦ちゃんを連れて頻繁に遊びに来るようになった。叔父さんは僕の隣に座って、饐えた麦酒の匂いを発散させながら「うちげんの流迦のわっつぇか可愛いごてな!?嫁んするが!?うはあははは、ないごてぇおかせっすっとか!はっはっはっは」などと、僕の頭をぐりぐり撫でながら上機嫌で話しかけてきた。…叔父さんに言われると、何だか僕はとてもいやらしい事を言ってしまった気がして、嫌な気分がじんわり広がった。不安になって流迦ちゃんを見ると、いつものように笑ってくれた。

親族が集まる宴会なんかのとき、叔父さんは、いやに僕の隣に好んで座るようになった。そのたびに、『流迦を嫁んするが?』『嫁んするが?』とからかわれた。周りの大人も面白がって囃し立て、僕たちはあたかも新婚のように扱われたっけ。普段から無口な父だけは、眉一つ動かさないで、僕の動向をうかがうような顔をしていた。
…今だから言うけど、僕も半分『その気』になりかかっていた。流迦ちゃんは将来、僕のお嫁さんになる。そう、本気で信じかけていたんだ。

宴会がはけて、酔いつぶれた大人たちの間を縫って片づけを手伝っている時、父がぬるくなった芋焼酎を舐めながら(貧乏性なのか、この人は、宴会の終わりまで不味くなった酒を1人で舐めてることが多い)僕の後をついてきた。やがて誰もいない渡り廊下に出ると、呟くように言った。
「…あんしが、あげに露骨にするんは理由があっとよ。お前や流迦ちゃんの気持ちには、いっちゃん関係なかことばい」
「でも、でも僕流迦ちゃん好いとるが。嫁んしてもええがよ!」
「ええがよ、やなかよ。…ま、お前は勘のよか子たい。心配はしてなか。じゃっどん…」
そう言って残りの焼酎をぐっとあおると、僕が運んでいる皿の上にコップを置いて、すたすたと僕を追い抜いてしまった。
「流迦ちゃんが、もちぃっと、強かおなごじゃったらなぁ…」
「僕、いみしな子嫌いじゃ。流迦ちゃん、あのままでよかよ!」
父は、なにも言わなかった。怒ってるのか落胆してるのか分からないけど、なんとなく気まずい感じがして、他の話題を探した。
「父ちゃん、いつもぬるくなった焼酎飲んどるが」
「悪いか」
「誰も飲まんがね、ぬるいぬるいって」
「酒の一滴は血の一滴じゃ。飲めんうちから邪道な飲み方ぁ覚えんさんな」
そういい捨てると、突き当りの便所に入ってしまった。中からぅおううけぇあぐあとか変な呻き声が聞こえてきた。…血の一滴じゃなかったのか。

…それから程なくして、僕は流迦ちゃんが泣いて
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