暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
思わぬ懺悔、そして攻略へ
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「……ごめん!」

 全員の前に並べられた皿の中身が綺麗に平らげられたとき、沈黙はキリトによって突如破られた。そのあまりにも突然な叫びに全員が――あの細剣使いでさえも――目を丸くして彼に視線を向ける。視線の先のキリトは自分のひざに手を突き、額をテーブルに擦り付けたままで続けた。

「俺、ずっと悪いって思ってた。――あの時、マサキを放って俺だけ次の村へ向かって、一人で強くなって……。もし俺が、あの時マサキやクラインの面倒をきちんと見ていれば、多分今頃皆でもっと強くなれてたはずだ。……俺は……、俺は自分一人が強くなるために、マサキたちを見捨てたんだ……」

 心外だった。マサキはキリトに見捨てられたなどと思ったことは無いし、そもそも誘いを断ったのは自分の方だ。どう考えても、これでリタイアになった場合に非があるのはマサキの方だろう。
 しかし、搾り出すように話すキリトの言葉からは後悔と自責の念が滲み出ている。マサキはどうしたものか一瞬考えると、口を開いた。

「いや、誘いを断ったのは俺の方だ。キリトは悪くないさ」

 マサキは何とか文章を述べたが、それは彼の知能指数からすればあまりに月並みなものだった。それほどまでに、キリトの言葉はマサキの想定を超越していたのだ。

「本当に済まない……。俺に出来ることなら、何でもするから……」

 キリトはその言葉にも全く反応せず、ただ申し訳なさそうに頭を下げ、謝り続ける。文末の最後に「許してくれ」の一言がなかったのは、“自分のしたことは償いなしに許されるべきではない”というキリトの考えの表れだったが、マサキはそれにも気付かない。何とか思考を冷却させようと一度大きく息を吐き出し、背もたれに体重を預ける。

(さて、どうするべきか……。この様子だと、「大丈夫だ」って言ったところで意味はないだろうしな。――いや、これは上手くすればチャンスになるな)

 マサキは思い付きを試すべく、今までよりも真剣な顔でキリトに向き直って、再び話し出す。

「――キリト、お前の気持ちは分かった。でも、別に俺はお前を恨んでなんかいない」
「……でも、俺はそれじゃあ駄目なんだ! ……頼む、マサキ。俺に……罪を償わせてほしい」

 先ほどよりも懇願の色が濃くなったキリトの言葉に、マサキは数秒間、右手を顎に当てて考えるしぐさを見せた後、ゆっくりと頷いた。

「……分かった。それじゃあ、お前には一つ要求を呑んでもらう」
「……分かった。何なりと言ってくれ」

 ここでようやくキリトは顔を上げ、まっすぐマサキを見る。マサキもキリトの瞳を見据え、話を続けた。

「キリトには、これから俺がβテスト時の情報を要求したとき、絶対に答えてもらう。例えそれがどんなものであろうと、だ。異議は認めない。以上」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ