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星河の覇皇
第一部第二章 銀河の群星その二
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、そのうえで投降してきた者には過去は問わずそれぞれの国の軍へ編入したり職をあてがうといった硬軟両方の手段を採った。これにより海賊の数は大きく減り治安は格段に良くなった。
 その上で海賊達と結託していた団体を次々に検挙し裁判にかけた。その中には市民派を気取りやたらと正義を振りかざし他者を糾弾する議院もおり皆驚いた。正義派は仮面でその正体は海賊と裏で繋がる悪党であったのだ。
 こういった輩は次々と裁判にかけられた。そして重罪を科せられることとなった。
 そしてそれと前後して中央警察が設立された。これは中央政府の管轄にある連合全体の治安を司る組織であり彼等は宇宙海賊や星系をまたにかける凶悪犯達を取り締まった。この存在がさらに治安をよくしたことは言うまでもない。
 こうした状況が二百年に渡って続いた。その歩みは遅い。これはやはり連合の多様性と各国の主権及び個性の強さからくるものであるがそれでも連合は次第に変わっていた。
 今連合の首都地球はそれまでの名目上の首都ではなくなっていた。今や本当の意味での首都となっていた。
 かって『太平洋の真珠』と呼ばれたシンガポール。今そこには中央政府の元首である大統領の官邸及び連合中央議会、そして連合中央裁判所等がある。南洋のこの都市とその周辺は千年以上経ても今尚連合の心臓部であった。
 その官邸の廊下を歩く一人の若者がいた。
 その周りには多くの秘書官や護衛達がいる。そのものものしい様子から彼がかなり高い地位にいる人物であるとわかる。
「それにしても急に呼ばれるとは」
 その若者は少し首を傾げて言った。
 長身で細い身体をしている。切れ長の目に黒い髪と瞳、アジア系独特の顔立ちである。今や混血はかなり進んでいる。とりわけ多くの多様な国家から成る連合ではそれは特に顕著である。人種問題などというものはこの時代には既に愚かな過去の遺物となっていた。
 見ればその顔だけでなく物腰からも気品が漂っている。貴公子を思わせる高貴な美貌がそれを一層際立たせている。
 歩き方もまた優雅である。本来ならば武骨である筈の黒と金の軍服も彼が着ると豪奢なものとなってしまう。
「一体私に何のご用件であろう」
「閣下でなければならないと言っておられたそうですが」
 側に控える秘書官の一人が言った。
「私でなければ、か」
 彼はその言葉に対し再び首を傾げた。
「それにしては妙だな」
 彼は今度はその整った細く綺麗な眉を顰めて言った。
「二人で話がしたいと大統領から言われるとは」
「いや、こうしたことは結構あるものです」
 秘書の一人が言った。
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