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薔薇の騎士
第一幕その一
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れ、愛撫、身を焦がし炎となる」
 次々に言葉を述べていく。
「僕の手が貴女のところに行くように貴女に引き寄せられます。それが僕なのです」
「それが貴方なのね」
「はい」
 また元帥夫人の言葉に頷くのだった。
「僕は貴女にとって坊やなのかも知れません。けれど貴女を見ることも聞くこともできなくなったら僕はどうすればいいのでしょうか」
「貴方は私のものよ」
 その彼に対して元帥夫人は静かに述べた。
「恋人なのよ」
「はい、そうです」
 その言葉にも頷く。
「けれどどうして昼間が来るのか。僕は昼が憎い」
 こうも言う。
「昼は何の為にあるのか。昼には貴女があの人の、いえ皆のものとなる」
 それを嫌そうに告げる。
「僕は夜が欲しい。永遠の夜が」
 そう言うが夜は来ない。朝になるだけであった。
「ベルが」
 この時ベルが聞こえてきた。
「鳴った。一体何が」
「お客様ね」
 元帥夫人はそう考えた。
「誰かしら」
「手紙や挨拶状を持って来た使いの者でしょう」
 オクタヴィアンはこう考えた。
「ザーラウから?ハルティックから?それともポルトガルからか」
 この時代のオーストリアはマリア=テレジアの時代である。プロイセンとの対立を背景に積極的な外交を行っていた時代である。だから各地か人々が行き来していたのだ。
「何処からか」
「あっ」
 元帥夫人が声をあげると扉をノックする音が聞こえた。夫人は扉の方に顔を向けて問う。
「誰なのかしら」
「僕です」
 小さな男の子の声であった。

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