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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第十九話 懸念
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長に推薦された時、当然だが周囲からは驚きと反対の声が上がった。それに対し推薦者はローエングラム公が総参謀長に求めるのは軍事的な助言ではない、政略面での助言だと言った。そして公もそれを受け入れた。これによって彼女は帝国宰相秘書官と宇宙艦隊総参謀長を兼任する事になった。ローエングラム公の側近中の側近と言って良いだろう。

そして俺だ。俺は今、新たに立ちあげられた防諜機関、国家安全保障庁の長官という事になっている。国家安全保障庁は旧内務省社会秩序維持局を引き継いだものだが内務省の一部局ではなく宰相府の外局という形になっている。つまりローエングラム公に直結する機関という事だ。

国家安全保障庁に対するローエングラム公の期待は大きい。公は憲兵隊が今一つ信用できないと思っている。オーベルシュタイン憲兵総監の能力は認めながらも監視役が必要不可欠だと思っているのだ。ギュンターが言った“国家安全保障庁に期待されているものはこんな状態を許すものじゃない”は冗談でも誇張でもない。“元帥閣下の雷が落ちる前に軌道に乗せないと大変な事になりますぞ”も同様だ。国家安全保障庁はギュンター・キスリングを副長官に据え、ようやく機能し始めた。

「アントン、今回の一件は上手く行った、そう思って良いんだろう」
ギュンターが俺の顔を覗き込んだ。眼が笑っている。
「そうだな、幾つかの予想外は有る。しかし総体として上手く行ったと思う。結果は上々だ」
「フロイライン・マリーンドルフもそう考えているのか」
「まあそうだ。総参謀長になった事をぼやいてはいるがね」
ギュンターが苦笑を浮かべた。

上手く行ったと思う。エーリッヒを利用しフェザーンの暗躍を明るみに出した。そしてオーベルシュタイン憲兵総監に釘を刺す事が出来た。俺が国家安全保障庁の長官になった事、フロイライン・マリーンドルフが宰相秘書官に宇宙艦隊総参謀長を兼任する事になったのは予想外だが、それとて良い方向に予想外と言える。

「アントン、今回の一件、結局はエーリッヒの一人勝ちだと俺は思うんだが……」
「そうだな、全て奴の思い通りになった。あれほど騒いでいたヴァンフリートの件も今では誰も口にしない」
「下手に口にすればフェザーンとの繋がりを疑われるさ。それにオーディンには海賊屋敷がある」
ギュンターが嘲笑交じりに言い放った。目には皮肉な色を浮かべている。

事件後、黒姫一家の事務所は海賊屋敷と呼ばれるようになった。そして海賊屋敷に居る人間達は黒姫の目と耳と呼ばれ怖れられている。事件前、ヴァンフリートを接収しろと声高に主張していた人間達は皆口を噤んでいる。いや、エーリッヒを非難する声さえ聞こえてこない。たかが海賊と侮って生半可な気持ちで敵に出来る相手ではないと誰もが分かったのだろう。

「ところでギュンター、フェ
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