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魔王の友を持つ魔王
§26 料理店での遭遇者
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で、恵那が道路の反対側に目を移す。視線の先には自販機と、身なりの整った青年が一人。

「ミッキさん……?」

「恵那さん、お知り合いですか?」

 依然として無様な黎斗に変わり、エルが恵那に問いかける。

「うん。四家の一角、九法塚家の跡継ぎで幹彦さん、っていうんだ。四家の跡継ぎの中では一番マトモないい人だよー」

「……ご自分がマトモじゃないと自覚なさっていらっしゃるのですね」

 エルと恵那の会話に他に人がいることに気付いたのか、青年が黎斗の方へ向かってくる。

「やあ、恵那さん久しぶり。こちらのお二人は? ……特に君、なんか顔色悪いけど、大丈夫?」

「……だ、大丈夫です」

 初対面の人に心配される黎斗。そこまで今の顔色は悪いのか自問する。

「マスターは自爆しただけです。貴方が九法塚の次期党首様ですか。お初にお目にかかります。こちらで情けない表情をしているのが須佐之男命様の眷属、水羽黎斗です。私は黎斗の使い魔でエルと申します。以後お見知りおきを。……我が主がこのようなみっともない姿で申し訳ありませんがなにとぞご容赦を」

 四家? 四つの家ってなんだろう? 黎斗の頭を”?”マークが走り抜ける。

「あー、頭が回らない……」

 これではまるで二日酔いだ。やせ我慢をこれ以上してもおそらく碌な結果になりはしない。というか、恥が増えるだけになりそうな気がする。潔く諦めて治癒の術でも使おうか。

「ちょいまち……」

 一端決断すれば後は早い。少名毘古那神の力を用いて作成した、体調回復用の水を入れたペットボトルをラッパ飲み。なんとなく持ってきていたのだが、まさか本当に使うことになるとは。備えあれば何とやら、だ。もきゅもきゅと、力の抜ける音が数秒聞こえみるみる間に黎斗の表情に生気が戻ってくる。

「……あーあ、大分マシになったわ。二人ともお騒がせしました」

「失礼ながら。貴方様があの(・・)?」

「あのって?」

「これは失礼いたしました。ご老公の眷属にして懐刀と噂の黎斗様ですか?」

 様をつけられた。なんでだろう。黎斗としてはそんな偉い人種になった記憶はないのだけれど。

「あー…… そういえばれーとさんは古老の一人なんだっけ」

 普段が普段だから忘れてたよ、と笑う恵那を見て氷解する疑問。古老はこの青年の所属する組織の上層部だったか。

「黎斗でいいですよ。多分年下ですし。スサノ……御老公様の眷属をしている以外は普通の人間ですので」

「九法塚様、我が主(マスター)は今でこそ眷属ですが平民出身で表舞台に出ていなかったので敬意を受けることに慣れておりません。色々思うところはおありでしょうが一般人と同じように接してくださいますようお願いします」


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