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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十八話 改革へ向けて
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帝国暦487年  6月 8日  オーディン  リヒテンラーデ侯爵邸   エーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイク



リヒテンラーデ侯の邸を訪ねると応接室に通された。それほど待つことも無くリヒテンラーデ侯が姿を現す。今日は休みのはずだがいつも宮中で見るようにきっちりとした格好をしている、このまま宮中に行けそうだ。いや国務尚書で有る以上休日に呼び出されることは結構多いのかもしれない、だから家でもラフな服装はしないという事か。偉くなるのも考え物ではあるな。

「御休みの所、申し訳ありません」
「いや、構わん。宮中では話せぬ内容だ」
侍女が飲み物を持ってきた。紅茶が二つ、前に宮中でも紅茶を御馳走になったな。この老人、紅茶が好きなのか……。

「国務尚書閣下は如何思われますか?」
俺の問いけにリヒテンラーデ侯が顔を顰めた。
「何とかしたいとは思っている。帝国の国情は必ずしも安定していない。何らかの改革は必要と思っているが……」
リヒテンラーデ侯が語尾を濁した。

先日、リヒテンラーデ侯に国内の改革について相談したいと話した。厳しい表情をしたが聞きたくないとは言わなかった。この老人、必ずしも貴族達の我儘に納得はしていない。むしろ何らかの枷が必要だと考えている。ただどんな枷をかければ良いかが難しい、そう考えているのだろう。老人が何より恐れているのは混乱だ。

「改革の必要性は認めるが改革によって国内が混乱するのは困る、そう言う事ですね」
「そうだ。平民達の間ではかなり不満が募っているようだ。それをなんとか解消したい、いやしなければなるまい。しかしそれにより国内に混乱が生じるのは困る、難しいな」
「なるほど」

いささか虫の良い話ではある。しかし国政の責任者としては国内の混乱は避けたいと思うのは当然だろう。戦争で有利な状況にある以上、それを無にするような混乱は困る、そうも思っているはずだ。俺自身、リヒターやブラッケと話すときにはそれを考えざるを得なかった……。

「極端な話をすれば貴族など半分は滅びても良いと思う時も有る、ああも身勝手な連中などな」
「私もそう思います。戦場に連れて行って弾除け代わりに使ってやろうかと思うくらいです」
俺の言葉にリヒテンラーデ侯は一瞬キョトンとしたが直ぐに笑い出した。そして“酷い男だな”と俺を評した。

帝国の国内治安情勢はかなり酷い。経済、財政が滅茶苦茶なのだ。帝国と同盟の人口だが帝国は二百五十億、同盟は百三十億という数字になる。にもかかわらず、帝国と同盟の国力比はある経済学者によると四十八対四十だ。人口が倍近いにもかかわらず国力比はほぼ同じ。いかに帝国が非効率的な国家運営を行っているかが分かる。

この状況で良く同盟相手に百五十年も戦争をやっているものだ。現状では帝国が有
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