暁 〜小説投稿サイト〜
少女1人>リリカルマジカル
第六話 幼児期E
[7/7]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
さんが泣いている姿なんて、初めて見た。母さんはいつも笑いかけてくれた。どんなに仕事が忙しくても、どんなにつらい時でも、俺たちの前では決して泣いてる姿を見せなかったから。

 もちろん俺だって、それが全てとは思っていなかった。俺たちに見せない顔があるのは当然だってわかってはいた。それでも、こうやって母さんの泣き顔を、辛い表情を見てしまうと…込み上げてくるものがある。

 俺では母さんの涙を拭いてあげることはできない。今俺が行っても、母さんに無理をさせてしまうだけだから。心配させてしまうだけだから。俺が母さんの息子だから、母さんは今の自分を見られたくないはずだ。

『……ますたー』
「大丈夫。寝ようか、コーラル」

 俺は音をたてないように扉を閉める。母さんに溜まっているものが少しでも流れて欲しい。今は泣かせてあげるべきだと思った。それしか、今の俺にはできないから。


「なんで俺、子どもなんだろ。なんで母さんの涙を止められるような、力がないんだろう」
『それは…』
「悪い、なんでもない。コーラルもお疲れ様、ありがとう」
『いえ、ますたーも無理をしては駄目ですよ。…絶対に』
「はは、うん。わかったよ。おやすみ、コーラル」
『おやすみなさい、ますたー』

 俺はベッドに身体を倒し、目を閉じた。

 俺にとってプレシア・テスタロッサは、物語の登場人物でも、他人でもない。大切な、大切な母親。失いたくない俺の守りたい人。

 こんなにも俺たちのことを愛してくれているんだって、その思いがひしひしと感じられた。


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ