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髑髏天使
第三話 日々その九
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 博士の研究室で。彼は憮然とした顔で部屋の端にいた。そこに椅子を置いて座り静かに紅茶を飲んでいたのであった。気配は剣呑なものだった。
「いつも不機嫌な人だけれどね」
「今日はまた特に」
 妖怪達はそんな彼を見てひそひそと囁き合う。
「どうしたのかな」
「二日酔いとか?」
「ああ、それは違うだろうね」
 自分達でそれは否定する。
「多分。何かあったんだよ」
「何か?」
「そう、何かだよ」
 こうも言うのだった。
「そうじゃなきゃあそこまで無愛想にならないでしょ」
「じゃあ何?」
「何があったの?」
 今度の話題はこのことであった。
「何があったらああなるのかな」
「さあ」
「さあって」
「聞ける?」
 頭の禿げた老人に似た小さい妖怪が皆に問う。ひょうすべである。
「今のあの人に。聞けないでしょ」
「まあ聞けって言われたら」
「困るねえ、確かに」
「普段から怖い雰囲気あるのに」
 彼は妖怪から見ても怖いのであった。だから誤解する人も多いのだがそれでもそんなことを気にするような人間でもない。
「それが今は余計に強くなってるから」
「部屋にいるだけでもねえ」
「迫力あるよ」
「敗れたか」
 だがここで誰かが牧村に声をかけたのであった。
「そうじゃな。敗れたな」
「わかるのか」
「わからない筈もない」
 彼に問うたのは博士であった。自分の席に座りつつ彼に顔を向けて声をかけたのである。これには周りの妖怪達も驚きを隠せない。
「博士勇気あり過ぎ」
「怖くないの?」
「別にのう」
 こう答えながら机の上にあるお茶を飲む。見れば玄米茶である。
「それはないな」
「ないんだ」
「僕達物凄く怖いんだけれど」
「御主等はまた怖がり過ぎじゃ」
 しかし博士はそんな彼等に笑ってこう述べる。
「何も怖いことはないぞ」
「そう?怖いよね」
「話し掛けられないよ」
 妖怪達は博士の言葉を聞いて顔を見合わせて言い合う。
「普段からあれだし」
「やっぱり博士って凄いね」
「別に取って食われるわけではあるまい」 
 博士の言い分はこうであった。
「それでどうして怖いのじゃ。全然こわくないぞ」
「言われてみればそうかな」
「まあそうだね」
 妖怪達は博士の言葉を受けてまた顔を見合わせる。
「それを考えたら話し掛けられるかも」
「それでも滅茶苦茶怖いけれど」
「だから怖くない。それでじゃ」
 博士は妖怪達をよそにまた牧村に声をかける。牧村もまたそれに応えて顔を向ける。
「敗れて。どうするのじゃ」
「どうするかか」
「そうじゃ。敗れても生きておる」
 牧村に対してこのことを告げるのだった。
「だったらまた戦うんじゃろ?」
「それが髑髏天使の宿命だな」
「如何にも」
 
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