第二話 焦土戦術
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の面倒を知らぬ振りで放置すれば後々黒姫一家にも悪い影響が出かねない。それで親っさんは下げたくもねえ頭を下げて頼んだんだ。……ワーグナーの頭領もそれを知っている、だからああしてウチの組織を気遣って下さるんだ」
「……」
副頭目が俺達をギロッと睨んだ。
「分かったか? 分かったら騒ぐんじゃねえぞ。外でピーチクパーチク喋るんじゃねぇ。何も知らない振りで仕事しろ、それが親っさんのためだ。親っさんを傷つけるようなマネはするんじゃねえぞ」
皆黙って頷いた……。
帝国暦 487年 9月 5日 クラインゲルト子爵領 ウルリッヒ・ケスラー
「もうすぐ反乱軍がここに来ます。軍の命令で食料を徴発することになりました。クラインゲルト子爵、軍に御協力頂きたい」
嫌な役目だ、感情を交えず軍の命令だけを伝えた。多分怒声、いや罵声が響くだろう、詰られるに違いない。
「なるほど、やはりそうですか」
「?」
「残念ですが軍に御協力は出来ませんな」
やはり反対された、しかし妙な感じだ、子爵は穏やかな表情を浮かべている。
「しかし」
「ケスラー中将、そう言われましたな」
「ええ」
「残念ですがこのクラインゲルト子爵領の住民達は十日分の食糧しか持っておらんのです」
「十日分?」
「そう、十日分です。反乱軍が来るころには食料は皆無ですな。徴発する食料など何処にもありません」
どういう事だ。十日分しか食料が無い、にも関わらず子爵は笑みを浮かべている。何かがおかしい。
「クラインゲルトだけではありません。辺境星域の住民は皆十日分の食糧しか持っておりません」
「馬鹿な……、一体何を言っているのです」
クラインゲルト子爵が耐えきれないように笑い出した。
「失礼、会わせたい人物がいます」
「会わせたい人物?」
「ええ、こちらへ」
子爵が先に歩き出す。後をついていくと小奇麗な部屋に通された。先客がいた、小柄な黒髪の若い男性だ。この男が会わせたい人物だろう。そしてこの奇妙な事態を引き起こした人物のはずだ……。
「クラインゲルト子爵、会わせたい人物と言うのはその人ですか」
「ええそうです」
私とクラインゲルト子爵の会話を聞いても彼は何の反応も示さなかった。多分、私の事は知っているのだろう。面憎いほどの落ち着きぶりだ。
「紹介していただけますか、彼を」
「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、悪名高き海賊組織、黒姫一家の頭領です」
「……黒姫のヴァレンシュタイン……」
驚きのあまり呟くと彼が笑みを浮かべた……。
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