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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
第八話
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ん、韜晦しやがって。参謀の身にもなってみろ」

「いずれ精神的にお返ししますよ」

「大いに足りんね。ちょっと河岸かえようか。摂津も来い」

 そして柳田は二人を連れ出して屋上へと向かった。

「いいか伊丹に摂津。この世界――特地は宝の山だ」

 柳田はそう言って再び煙草に火を付ける。

「汚れのない手つかずの自然、そして何より世界経済をひっくり返しかねない膨大な地下資源、文明格差は中世と現代並、そんな世界との唯一の接点が日本に開いた。……なぁ伊丹、摂津。三宅坂や海軍省の連中は知りたがっているんだ。アメリカは兎も角、中露……世界の半分を敵に回す価値が特地(此処)にあるのかをな……」

「その価値があったら?」

「分かるだろ? 世界では持っている者が勝者だ」

「……柳田さん、あんたが愛国者だってのは分かった。俺も軍人だから全力は尽くす。だけどピンと来ないんだよ。連れてきた子どもと世界情勢の関わりが」

 伊丹は柳田にそう言った。

「お前らは連中と信頼関係を築いてきた」

「ハ?」

 柳田の言葉に伊丹は驚く。

「まさか子どもに聞けっての? 金銀財宝がどこにあるかって?」

「知ってる人間を探して情報を得られるだろう? 特に摂津、お前はヒルデガルドさんと仲良く話している」

「コミュニケーションの一環ですよ」

「まぁあんな出逢いじゃあな」

 柳田と伊丹は笑う。樹はまたかと思う。

「伊丹、あんたには近日中に大幅な自由行動が許可される。勿論それはお前の第三偵察隊だ。行動するのはいい、だがな最終目的は一つだ、それを覚えておけよ」

「たまらんね。柳田さん、あんたはセコいよ」

 伊丹はそう反論するが柳田は笑う。

「そういう仕事だ。今までのんびりしてた分は働いてもらうぜ」

 柳田はそう言って屋上を後にした。

「……ま、今は避難民の飯と寝床ですな」

「そうだねぇ」

 伊丹はそう呟いた。





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