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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十七話 本分を尽くす
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官に就任した事を祝うパーティが開かれている。宮中、軍の重鎮が開くパーティだ、当然だが参加者は多い。正規艦隊司令官に新補された我々も出席は当然なのだが……。口に運ぶワインは苦いままだ。

「それにしても、こんな事は初めてだろう?」
俺が問いかけると皆が笑うのを止めて頷いた、互いに顔を見合わせている。今回新たに艦隊司令官に選抜された人間は皆下級貴族、平民だった。これまでこんな事は一度も無かった。周囲が俺達を遠巻きに見ているのもそれが理由だろう。

「戸惑いが有るかな」
太い声で話しかけてきたのはケンプ提督だった。俺が頷くとそのまま話を続けてきた。
「ファーレンハイト提督の気持ちは分かる。俺もレンネンカンプ提督も卿同様いきなり中将に昇進して艦隊司令官に新補されたからな。嬉しさよりも戸惑いの方が大きい、本当にいいのか、とな」

そうなのだ、武勲も挙げていないのに中将に昇進し宇宙艦隊の正規艦隊司令官に新補された。その所為で周囲の視線を必要以上に感じざるを得ない。
「卿らだけではないさ。我々は皆多かれ少なかれ同じような気持ちは持っているよ、本当に良いのか、とね」
「総参謀長はそう言われるが……」

「貴族達の中にはブラウンシュバイク公に正規艦隊司令官にして欲しいと頼んだ者もいたようだ。最近勝ち戦続きだ、戦争とは楽に勝てるものだと思ったらしい。しかし公はそれを受け入れなかった。弾よけになら使えるが指揮官としては使えないと言ってな。もっとも本人達には言わなかったそうだが……」
総参謀長の言葉に皆が苦笑を浮かべた。弾よけとはまた酷い……。

「気になるなら直接公に訊いてみる事だ」
総参謀長が意味ありげに視線を逸らした。総参謀長の視線を追うとブラウンシュバイク公の姿が見えた。笑みを浮かべながらこちらに向かって来る。一人では無い、ミューゼル大将も一緒だ。

「どうですか、楽しんでいますか」
穏やかな口調で公が話しかけてきた。隣に居るミューゼル大将と見比べると全く正反対だ。黒と金、柔と鋭、ミューゼル提督は軍人らしさを醸し出しているが公からはそんなものは全く感じられない。この二人、仲が良いと聞いているが本当かと訊いてみたくなる。

皆が口ぐちに楽しんでいると言うと公はクスッと笑った。
「本当はこんなところよりも ゼーアドラー(海鷲)の方が寛げるのですけどね。そうではありませんか」
視線が飛び交った。皆困った様な表情をしている、実際には公の言う通りだとしても“こんなところ”と言われては返事に困るだろう。公だけがニコニコしている。

「まあ正直に言えばそう言う気分は有ります」
ビッテンフェルト提督が答えると公が笑い声を上げた。何人かが困ったように苦笑している。公とビッテンフェルト、二人とも困ったものだ。答え辛い質問をする上司とその質問
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