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崖に落ちても死ななかった
第二章

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 崖から落ちた、これには妻も娘も仰天した。
「ちょっと、大丈夫!?」
「お父さん生きてる!?」
 二人で即座に崖のところに行ってその下を確認した、崖は十五メートル位ありその下は土だったがそこでだ。
 豊は腰をついてだ、右手で頭を撫でつつ言った。
「痛かったなあ」
「ちょっと、痛いどころじゃないでしょ」
「すぐにお医者さん呼ぶわよ」
「立てる?」
「何ともない?」
「あっ、別にね」
 立ち上がってだ、豊は言った。
「何処も折れていない感じだよ」
「嘘でしょ、十五メートルはあるのに」
「そこから真っ逆さまなんて」
「どれだけ丈夫なのよ」
「けれど病院行くわよ」
 家族は即座に救急車を呼んでまずは豊を今いる傍の車道まで連れて行ってだった、彼を救急車に乗せて。
 それから病院で診てもらうとだった。
「軽い打撲だけですね、骨折も後遺症もありません」
「嘘ですよね」
「お父さん崖から落ちたんですよ」
 妻も娘も彼の傍で顎が外れそうな位驚いた。
「それでもそれだけって」
「十五メートルはあったのに」
「ですが本当にです」
 医師は驚く二人に話した。
「普通に今からお家に戻れますよ」
「やっぱりお父さん普通じゃないわね」
「そうよね」
 妻も娘もあらためて思って顔を見合わせて話した。
「物凄い丈夫よ」
「風邪一つひかないしね」
「こんな丈夫な人なんてね」
「普通じゃないわ」
「そうかな、別に」
 本人は特にそう思うことなく言った。
「俺は普通だよ」
「そこまで丈夫なのに?」
「普通に死んでるわよ」
 家族は即座に言葉を返した、そしてだった。
 豊はそれからも怪我一つせず病気もせず生きていったそのうえで見事大往生を遂げたが死因は老衰で百五歳まで生きた、それで周りは本当に丈夫な人だったと話したのだった。


崖に落ちても死ななかった   完


                     2024・4・20
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