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冥王来訪
第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その3
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 BETA戦争において、勝敗の帰趨(きすう)を左右したのは、火砲を中心とした大火力であった。
初期のソ連トルキスタン方面における遅滞戦術で、主役を飾ったのは多連装ロケット砲や地対地ミサイル「FROG (フロッグ)」。
黒海周辺やペルシャ湾岸などの沿岸部では、戦艦やミサイル巡洋艦による艦砲射撃や巡航ミサイルによる攻撃も効果的であった。
 以上の経緯から、米海軍は戦術機の格闘戦能力よりもミサイルキャリアとしての能力を求めることとなった。
 米海軍は、計画段階で、すでに100機の発注をするほどの期待の入れようであった。
この新概念の戦術機に関して、米海軍は新型の空母の建造を決定したほどである。
それ故に、ユルゲンが参加したF-14の展示飛行は、世界各国の熱い視線が注がれていた。

 今回のF‐14公開セレモニーの招待国は、以下の通りだった。
急速に勢力を伸ばすソ連海軍に対抗して海軍の近代化をはかる日本。
その他にイスラエル、サウジアラビアなどの中東の親米国、オーストラリア、カナダといった英連邦加盟国であった。
空母の試験導入を決めていたスペインも検討に入ったが、予算の制約上、断らざるを得なかった。
 彼等以上に、F‐14戦術機に対して、ひときわ熱い視線を注ぐものがいた。
中東有数の親米国家、帝政イランである。
 ここで、すでに歴史の中に消えていった国家、帝政イランこと、パーレビ朝イランに関して説明を許されたい。
パーレビ朝イランは、ガージャール朝イランが、英国とソ連の侵略と立憲君主制を求める騒擾事件との内憂外患に苦しむ中、陸軍総司令官であったレザー・ハーンが起こした軍事クーデターによって成立した国家である。
クーデターの後、議会を掌握したレザー・ハーンは、ガージャール朝の廃位を決めると、レザー・シャーという名前を名乗り自身が帝位についた。
 帝政イランは1925年の建国以来、ソ連の脅威に悩まされてきた。
加えて、建国の父の外交政策もあって、対英関係も消して芳しいものではなかった。
故に、初代のレザー・シャーはナチスドイツに近づき、その結果として英ソ両軍の進駐を許すこととなった。
 レザー・シャーの退位を受けて即位した二代目の国王は、引き続き英ソ関係に苦難した。
親ソ派首相による石油国有化政策により起きたアーバーダーン危機の際、国王はCIAに救いの手を求めた。
 国王の救援要請は米英の石油資本にとって、将に蜘蛛の糸だった。
ソ連によるイランの共産化防止を口実に、アジャックス作戦と呼ばれるクーデターを起こす。
親ソ派の首相は追放され、国王派の将軍が政権を奪還し、親米政権が樹立された。
 二代目の国王――日本ではパーレビ国王として知られる人物――は、ソ連の脅威から軍の近代化を進めた。
高性能の武器に、ミサイルシステム
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