第2章 項羽と劉邦、あと田忠 〜虞兮虞兮、奈若何〜
第11話 四面紅白歌合戦
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あれから一進一退の戦いを続けている。
項羽軍は鐘離昧といった勇将を抱えてはいるんだが、俺と韓信の二枚看板には勝てない。さらに、猫耳軍師を筆頭とした軍師陣もこちらが圧倒している。
そして不思議ちゃんのカリスマで諸侯や民衆が次々と味方してくる。だから負けてもかまわない。
「劉邦軍は畑から兵士が採れる」と漏らした俺は悪くない。悪くないんだ。
負ければ負けるほど強くなる不思議な劉邦軍。どこのソ連軍ですか?
それに対して項羽が出れば負けなしだが、彼女のいない軍は弱い項羽軍。どこのナポレオン軍ですか?
●月×日
いずれにせよ、時間は俺たちの味方だ。項羽はどこかで決戦をしないとならない。俺たちも不毛な戦など早く決着したい。両者の思惑が重なって決戦の地は定められた。その地の名は――垓下。
□月K日
よし、決戦にて項羽を破ったぞ!
F月※日
現在、項羽軍を包囲中なう。
ここで楚軍を包囲したまま紅白歌合戦をして挑発する作戦に出る。
敵の士気を大いに下げることに成功した。
いや、冗談だったんだけれど。
◆
劉邦軍と降伏した項羽軍の将兵たちが、楽しそうに笑いあっている。
「みんなが楽しく笑いあって暮らせる世界を作るのが、私の夢なんです」
普段の淫乱ピンクが鳴りを潜めた劉邦が、側近たちに語り掛ける。
そこら中に篝火がたかれ、少量ながら酒も出され、つい先日まで敵だった兵士たちが腕を組んで大声で笑い合っている。まるで奇跡のような光景だ。
「だからみんな、劉邦ちゃんにこれからも協力をお願いね〜」
くすりと冗談めかして笑う劉邦の姿をみて、張良たちは感極まっていた。素行の悪さに定評のある陳平ですら厳粛な雰囲気を出している。新参の田忠、彭越も同様である。
不思議な、そして奇跡のような一体感がそこにはあった。
その場で幹部は、劉邦への忠誠を改めて誓うのだった。それはとても神聖な誓だった。
宿敵項羽を破ればあとは、内向きの問題である。このタイミングで引き締めを図った劉邦は、意図的なのか、あるいは天然なのか、空気を作ることにかけては天性のものがあった。
そして、その流し目が向かう先は??田忠。伝説に謡われる悲劇の仙人だった。
「……ッ」
猫耳フードを深く被ると、すぐに表情を隠す。
今の光景を忘れようとかぶりを振るも、嫌な妄想が膨らんでいく。
??あの劉邦が田忠に本気になっているのではないか。
苦い胸の内をどうすることもできず、張良の焦りは加速していくのだった。
◆
「楽しいですねえ〜忠ちゃん?」
「ええ、本当に。奇跡なような光景です、劉邦様」
「劉邦ちゃんでいいって言ってるのに〜いけずです
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