第一章
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年末の居酒屋
年末になった、それでだった。
全国に展開している居酒屋チェーン八ちゃん新宿店の北新地店の店長後藤田良平は店員達に真剣な顔で言った。細面で色黒で優しい小さめの目を持っていて眼鏡をかけている。背は一七二位で痩せていて薄茶色の髪の毛を短くしている。
「皆、十二月になったからね」
「はい、忘年会ですね」
「予約凄いですね」
「もう今月は、ですね」
「特別ですね」
「毎年言ってるけどね」
この時期はと言うのだった。
「もう戦争と思ってね」
「やっていきましょう」
「今月は」
「もう」
「そうしていくよ、頑張っていこう」
自ら言ってだった。
後藤田は先頭に立ち接客や清掃、勘定といったものをしていった。客は普段より遥かに多く団体も常で。
入れ替わり立ち替わり来た、開店から閉店まで休む間もなく。
バイトの学生達は初日で驚いて言った。
「無茶苦茶忙しいですね」
「俺こんな忙しいバイトはじめてです」
「僕もです」
「これが年末の居酒屋だよ」
後藤田はへとへとになっている彼等に話した。
「忘年会があるからね」
「だからですか」
「予約も多いですし」
「団体のお客さんも多いんですね」
「そうなんですね」
「そうだよ、もうこれがね」
まさにというのだ。
「普通だから」
「年末の居酒屋はですか」
「こうした風なんですね」
「滅茶苦茶忙しいんですね」
「逆に忙しくないと」
その場合はとだ、後藤田は閉店作業をしつつ話した。
「困るよ」
「稼ぎ時ですね」
「この時の居酒屋は」
「だからですね」
「そう、だからね」
それ故にというのだ。
「こうでないとね」
「困るんですね」
「お客さんがいないと」
「むしろ逆に」
「そうだよ、だから嬉しいと思わないと」
店の営業を考えるとだった。
「駄目だよ、じゃあ明日も頑張ってね」
「わかりました」
「そうしていきます」
「明日も頑張ります」
「宜しくね」
手を動かしながら話した、そして実際にだった。
店は次の日もまた次の日も大忙しだった、注文が乱れ飛び酒はあればあるだけ売れるという有様だった。
そうした日が何時果てるともなく続いたが。
クリスマスになってだ、後藤田は店員達に言った。
「今日は特にだよ」
「今から忙しいですよ」
「無茶苦茶忙しいですよ」
「うち和風のお店なんですけど」
「それでもクリスマスは飲む日だからね」
バイトの店員達に話した。
「それでだよ」
「この通りですね」
「滅茶苦茶忙しいんですね」
「内装もクリスマスにしましたし」
「そうだよ、今日は特に頑張ってね」
こう言ってだった。
彼はこの日も率先して動いた、そのう
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