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そこは本当に出る
第一章

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             そこは本当に出る
 この時弘田実篤と山崎唯のカップルは弘田が運転する車でドライブをしていた、その時にであった。二人共同じ職場で働いている。二人共今はセーターにジーンズとラフな格好だ。
 ドライブインで休んでいる時に唯は弘田に言った。小柄で一五〇位の背できらきらした黒目がちの大きな目とピンクの小さな唇と卵型の白い顔と長く黒い髪を持っている。それで一七五程のすらりとした背で茶色がかった髪をセットしている、きりっとした目と細面で細い眉と引き締まった唇を持っている。
「ねえ、この先のトンネルだけれど」
「あそこは行かないよ」
 弘田は唯に即座に答えた。
「絶対にね、もう一つの道に行くよ」
「えっ、こっちの方が近道なのに」
「近道でも行かないよ」
 弘田は唯に真顔で言った、二人でドライブインの中の店でコーヒーを飲みながら話している。弘田はブラックで唯は甘いカフェオレだ。
「絶対にね」
「どうしてなの?」
「ちょっとね」
 弘田は暗い顔で応えた。
「昔行ったことがあってね」
「何かあったの?」
「それは」
 弘田はより暗い顔になった、その顔を見てだった。
 唯は何か言えない事情があると察した、そうして言った。
「じゃあいいわ」
「あのトンネルは行かないってことでね」
「そうしましょう」
「そうしれくれたら嬉しいよ、僕も」 
 弘田は唯の言葉にほっとした顔で応えた。
「それじゃあね」
「ええ、そういうことでね」
「別の道を通ろう」
「そうしましょう」
 こうして二人はそのトンネルを通らなかった、そうしてだった。
 ドライブを楽しんだ、この時はそうしたが。
 ある日実家でテレビを観ていたがそれは心霊番組で。
 その番組を観てだ、唯は驚いて言った。
「ここって」
「あんたこの前ドライブに出たわよね」
「ええ、実篤さんとね」 
 唯は母に答えた。
「あの人が運転する車でね」
「そうだったわね」
「それでこのトンネル通ろうと言ったら」
 その時のことを話した。
「実篤さん絶対に通らないって言ったのよ」
「このトンネルを」
「まさか出るなんてね」
「いや、落ち武者の幽霊が大勢出て来て車を囲もうとしているなんて」
 母の冬織唯がそのまま初老になった様な外見の彼女が言ってきた。
「怖いわね」
「こんな場所だったの」
「ちょっとこれは通りたくないわね」
「そうね」 
 母に頷いて応えた、そして。
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