第二十章 万延子と文前久子
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のに、しっかり軸足を地に踏みしめ体重を乗せているかのような、どしり重たい蹴りが。
「がふ」
カズミの悲鳴と呼気が混ざった音。
たまらず飛ばされ、玉突きで延子ともども壁に激突して、床に落ちた。
また反動で舞い上がり、器用にトンボを切りつつ天井を蹴った康永保江は、
「頭突きい!」
一瞬のことにて、まだ槍を突き出したままの姿勢になっている治奈へと、楽しげな言葉の通りに頭突きかました。
ゴッ
と、鈍い音が響き、治奈の身体はぐらりよろける。
黒スカートの魔法使いは、着地と同時に右手の剣を一振り。
治奈は、頭突きに意識を持っていかれたかよろけているが、それでもなんとか横っ飛びで一撃をかわした。
と、そこへ、
「うわああああ!」
カズミの絶叫。
床を蹴り、黒スカートの魔法使い康永保江へと、両手のナイフを交差させながら、捨て身の一撃を打ち込もうと気迫満面身体を突っ込ませたのである。
だが、世は無情。
振り下ろしかけたその瞬間、またナイフを弾き上げられ、腹に拳を叩き込まれて、飛ばされ、壁に激しく身体を叩き付けられていた。
仲間を庇うよりこの隙に、と体勢立て直した治奈が、前へ進みながら、握り締めた槍の柄を勢いよく突き出した。
突き出した瞬間には、柄を掴まれ、止められていたが。
掴まれた瞬間には、ぐいと引き寄せられていたが。
咄嗟のことに身体が動かす、と、とよろけると、既に眼前には康永保江の喜悦の笑み。
「がふっ」
カウンター気味に、膝がめり込んでいた。
黒スカートの魔法使い、康永保江の膝が。
治奈の腹へと。
催す吐き気に前のめりになる治奈であるが、苦悶の表情のまま、かろうじて床を蹴って、自ら床に転がった。
その瞬間、
ぶん、
頭上を剣の軌跡が疾った。
吐き気を我慢して必死に避けたから助かった。そうでなかったら、ほぼ間違いなく、頭を叩き割られていただろう。
転がる勢いで、そのまま立ち上がるが、
康永保江の追撃はなかった。
先ほどの位置のまま、楽しそうでもあり、腹立たしそうでもある、なんともいえない表情で、剣を持ち仁王立ちになっている。
小さく、口を開いた。
「舐めてんのか? 全員まとめてこい、っていってんだろ。さっきから」
自殺願望でもなんでもない。
ただ、己の強さを証明したいというだけの言葉。
戦わなければ、受けて立たなければ、殺されるだけ。
こうして、あらためてまた四人で挑むカズミたちであるが、それは、
黒スカートの魔法使い康永保江の自信が、根拠に裏付けされたものであることを思い知らされるだけであった。
束になって仕
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