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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
特別編 追憶の百竜夜行 其の八
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いていなかったのである。

 狩られる側にいるのは、自分なのだということに。

「へっ。あんなにでけぇ図体のバサルモスが的だってのに、1発も当てられてねぇじゃねぇか。情けないねぇ」

 巧みに岩竜を操り棘をかわしているウツシの技量に感心しつつ、カノンは相棒の弓を静かに引き絞る。高台の上から風を読み、目を細める彼の狙いはすでに、トビカガチの眉間を正確に捉えていた。

「『当てる』ってのはな――こうやるんだよ」

 大自然の息吹に同調し、風と一つになる感覚の中で弓を引き、矢を射る。それは本来、熟練のハンターでも余程の才能がなければ辿り着けない境地なのだが。
 このカノン・アルグリーズという男は、訓練所を出たばかりの1年目でありながら。すでにその感覚を、己の肌で会得していたのである。

 まるで風に運ばれる葉のように、自然な軌道を描いて空を翔ける1本の矢は。やがて「必然」であるかの如く、飛雷竜の急所へと突き刺さる。
 そして、断末魔を上げる間も無く。トビカガチは、糸が切れた傀儡のように崩れ落ちてしまうのだった。

「飛雷竜が……!?」
「あそこにいるカノンがやってくれたんだな! ありがとうカノォオンッ! 恩に着るよぉおぉッ!」

 その瞬間を肩越しに目撃したウツシは、矢が飛んで来た方向からカノンの狙撃によるものだと悟り、大声で感謝の想いを告げる。彼の叫びは、遥か遠くの高台にいる本人にまでしっかりと届いていた。

「……近くで聞いたら、さぞかしうるせぇだろうなぁ」

 ウツシ達に手を振りつつ、彼の声量に苦笑を浮かべているカノンの懸念は的中していたらしい。隣を走っていたエルネアは、耳を塞いでウツシを睨み付けている。
 あれほど元気ならば、もう先刻の負傷を心配する必要もないのだろう。

「決着を付けに行くんだろう? ……かましてやりな、ウツシ」

 岩竜に跨り、大物のリオレイアがいる前線を目指して走り去っていくウツシ。そんな彼を見守りながら、同行しているエルネア。
 彼らならきっと、アダイト達に勝利を齎してくれる。その信頼を胸に微笑を浮かべるカノンは、2人の姿が見えなくなった後。

「さぁて。あいつらの邪魔になる奴らは、この俺が……」

 再び弓を握り締めると――次の獲物に向けて、容赦なく矢を放つのだった。

「……綺麗さっぱり、掃除してやりましょうかね」

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