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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
Dive to Sword Art Online the World
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 目の前の広大な石畳とそれを取り囲む中世をイメージしたのであろうレンガ造りの建築物に鮮やかな新緑の葉を枝一面に飾った街路樹が彩りを添え、正面の建物を乗り越えた先には妖しい黒い光を放つ宮殿が鎮座している。足裏に伝わる石の硬い感触を味わいながら、マサキは呟いた。

「コレが“私の世界”か……」

 マサキが一回転しつつ周囲を見ると、今も続々とプレイヤー達がライトブルーの光を放ちながら広場に降り立ちつつあり、その度に彼らの嘆息が鼓膜を揺さぶる。マサキが再び黒光りする宮殿を正面に見据えると、小鳥のさえずりとともに爽やかな風が広場のプレイヤー達を歓迎するかのように吹き渡る。
これだけの複雑な感覚をデータ上で完璧に再現し、さらにそれを正確にプレイヤーの脳内で形作るのは至難の業であるし、それを当初から些細なバグもなしに行うのは開発陣営の血のにじむような努力があってこそだろうと、マサキはそよそよと頬を撫でる風の感触を味わいながら素直に感心していた。

(さて、と。RPGである以上、まずは装備品の類を買い揃えればいいのか?)
 一通り周囲を見終わったマサキはこれからすべきことを考えることにしたのだが、如何せん何をどうすればいいのかが全く分からない。事故以前はマサキも人並みにゲームの類はしていたし、RPGのタイトルもいくつか持っていたのだが、このようなインターネットを利用したMMORPGは初めてだったので、もし以前マサキがやっていた物との差異に気付かずに何かマズイことをやらかしてしまったら目も当てられない。となると、後は誰かに訊くという選択肢になるのだが、このゲームはVR(・・)MMORPGであり、今までのMMORPGとも同じとは限らない。

 そんなことをあれこれ考えていると、視界の隅に街中を全力疾走で駆けていく一人のプレイヤーの姿が映り、マサキの脳裏に一筋の電気が走った。確かにこのゲームは世界初のジャンルを冠してはいるが、全員がこのゲームを始めてプレイするわけではない。ネットゲームである以上、動作確認用のβテストが存在するはずであり、そのテスト時からは細部の変更はあっても大きな流れとしては変わらないはず。そして、今のプレイヤーが見せた迷いの無いダッシュを見る限り、彼は十中八九βテスト経験者だろう。

「……なら」

 マサキは小さく呟くと、彼の後を追いかけて走り出した。


「なあ、その迷いの無いダッシュ、お前βテスト経験者だろ? 悪いが俺にちーとばかしレクチャーしてくんねぇか?」
 開始早々、路地にある安い武器屋で装備を整えようとしていたキリトは、角を曲がったところでいきなり捕まってしまっていた。キリト自身は他人との付き合いは現実(リアル)でも仮想(バーチャル)でも苦手だったため、そんなことをするつもりは毛頭無かったのだが、唐突に話し
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