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福岩
第二章

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「余計に運がよくなったということで」
「その運をですね」
「日本の為に使います」
「そうされますか」
「是非」 
 こう言ってだった。
 東郷はその日の夜に舞鶴の街から離れた場所を歩いた、この時同行していた士官達が彼から話を聞いて言った。
「いや、まさか」
「そんな話があるとは」
「ではここで歩いていると」
「若しかしたらですね」
「石の声が聞こえるんですね」
「そうなるんですね」
「そして幸運を授かるという」
 東郷は後ろにいる彼等に答えた。
「何でもな、しかしな」
「はい、そうそうですね」
「その声は聞けないですね」
「何処で聞けるかわからないですから」
「本当に聞けた時点で運がいいですね」
「夜に舞鶴の何処を歩いていると聞けるなら」
「もうそれだけでな」 
 東郷も言う、皆海軍士官の軍服で実に凛々しい。
「確かに運がいい」
「運がいいと声は聞こえて」
「運が悪いなら何処を巡っても聞けない」
「そうしたものですね」
「まさに運ですね」
「このことはそうですね」
「そうだ、わしにそれだけの運があるか」
 その石の声を聞ける様なというのだ。
「それの試しでもあるな」
「そうなりますか」
「では、ですな」
「これより舞鶴を歩いて回り」
「石の声を聞くのを待ちますか」
「そうしようぞ」
 こう言ってだった。
 東郷は士官達と共に歩き続けた、夜の舞鶴の街の外に出て暫くそうしていると不意に鶴の声が聞こえてきた。
 士官達はその声を聞いて言った。
「鶴の声ですな」
「これは間違いないですな」
「ということは」
「まさか」
「そのまさかかもな」 
 東郷もその声を聞いて述べた。
「これは」
「左様ですな」
「では何処に石があるか」
「探しますか」
「そうするか」
 東郷は士官達の言葉に頷きその場を探した、そして木の下に少し大きな白い石が月明かりに照らされてあった。
 その石から鶴の鳴き声が出ていた、東郷はその石の前に来て士官達に話した。
「これがじゃ」
「その石ですな」
「声を聞くと聞いた者に福をもたらす」
「それですな」
「うむ、まさかこんなに早く聞けるとはな」
 東郷はその石を見ながら言った。
「思わなかった、しかしな」
「確かに声を聞けました」
「今も聞いています」
「では、ですね」
「閣下は」
「貴官達もな」
 士官達もというのだ。
「運がよくなったぞ、ではこの運がな」
「日本にどう働くか」
「これからどうなるか」
「それが楽しみですな」
「閣下が授かった幸運が」
「どうなるであろうかな」
 東郷は笑って言った、そしてだった。
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