第四章
[8]前話
「ではおいがおはんを家に置いておける人を紹介するでごわす」
「そうしてか」
「いつも味噌を食える様にするでごわす」
「では」
「後は任せるでごわす」
大久保は実際に岩を岩が喋ろうが驚かすかつ岩のことを誰にも言わない様な口の固い者に預けた、以後岩はいつも味噌を食べて幸せに過ごした。
この話が一段落し都に着くと大久保は西郷に岩のことを話した。
「あの岩ばことも西郷どんだからでごわすか」
「おいどんだからでごわすか」
「ああしてまとまったでごわす」
「そうでごわすか」
「西郷どんの器とあればこそ」
それ故にというのだ。
「ああしてでごわす」
「話がでごわすか」
「一件落着となったでごわす」
「あの岩どんが幸せになったのなら」
西郷は大久保に穏やかな笑みで話した。
「おいどんはよかでごわす」
「そう言える西郷どんだからでごわす」
「話が落着したでごわすか」
「そうでごわす、それで都の騒ぎも」
「それもでごわすか」
「西郷どんが来られたでごわす」
だからだというのだ。
「もうでごわす」
「落着するでごわすか」
「必ず、それでも天下の騒ぎはまだ続くでごわすが」
それでもというのだ。
「西郷どんがいておいがいれば」
「必ずでごわすな」
「それも収まるでごわす、だから」
「これからもでごわすな」
「二人でやっていくでごわす」
「一蔵どん、頼むでごわすよ」
「おいをどんどん使って欲しいでごわす」
大久保は西郷に微笑んで答えた、僅かであるが口元も目も微笑んでいた。西郷はその大久保に穏やかな顔のまま応えた。
この岩は薩摩のある武家に引き取られたという、そして明治維新から廃藩置県が行われ長い時が経たが今もその家にあるという。そして毎日一度は杓子を出してそこに入れられた味噌を食べているという。そのお礼かその家は今も栄えているという。どの家かわからないが面白い話だと思いここに書き残した、西郷隆盛の彼が彼たる由縁の話の一つと言うべきか。
杓子岩 完
2020・11・12
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