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銀河日記
誕生
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るようだ。兄は弟を抱え、手術室の前を去って行った。面会までは時間がある。妻とともに戦い抜いた彼を休ませる必要があった。

それから6時間後、男は目を覚ました。疲労の色は大方消えていた。そこは妻のいる病室で、備え付けのベッドの上だった。
「漸く起きたか」
「そうですわね」
聞こえてきたのは眉間を揉んでいる兄と小さく微笑む妻の声だった。妻の腕の中には赤ん坊がすやすやと寝息を立てている。薄く入れたレモン・ティーのような茶髪が印象的だった。

「マリア、兄上・・。すみません」
すまなそうな表情で男は謝罪するが、二人は苦笑していた。

「それよりもあなた、子供の顔を見てくれませんの?男の子ですわ」
「おお!!そうか、男か!」
先程までの暗い表情が消えさり、うって変って晴れやかな顔で妻の下に駆け寄り、顔を近づける。

「名前を付けて下さいな」
「名前ならある、アルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラーだ。大叔父上と義父上の御名前を頂戴した」

「アルブレヒト、アルブレヒトですか、良い名ですわね、義兄上」
「お前が決めた名前なら、それで良い」
二人は笑みを浮かべ、快諾する。

「大きくなれよ、アルブレヒト」
父は赤ん坊の頭をなでながら、そう囁く。

それも届かないのか赤ん坊はすやすやとヒュノプスの愛撫を受けている。だが、これが本当に神の悪戯である事は、誰も知ることはなかった。赤ん坊は、まだ開かぬ瞳の内に、一体何を思っているのだろうか。

今はただ、彼は眠るばかりである。


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