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汚職はしても
第四章
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「ブン屋に何を書かれても気にするものか」
「そうですか」
「そんなことは言わん」
 全くというのだ。
「一切な」
「では何故僕の前に来られたのですか」
「だから一言言いに来たのだ」
「その一言とは」
「政治は金だ、金がかかる」
 早見を睨んだまま述べた。
「言うことはこれだけだ」
「ああ、そういうことですか」
「君もわかったな」
「はい、よく」
「ならいい、しかし君はわしをしっかりと調べて書いたな」
 山縣は早見にこのことを問うてきた。
「そうだな」
「はい、それが何か」
「ブン屋の中には碌に調べもせず好き勝手に書く者もいるが」
「そうしたことはしたくないので」
「そうか、そのことは見事だ」
 その小さな目と口髭が目立つ面長な顔で述べた。
「ならこれからもだ」
「自分で調べたことをですか」
「書くのだ、わしのことは好き勝手に書くがいい。わしはそんなことは一切気にせぬ」
 こう言ってだった、山縣は早見の前から姿を消した。その後で。 
 早見は同僚達と飲みつつ山縣との会話のことを話した、すると彼等はこう言った。
「成程な、そういうことか」
「何に使っているかと思えば」
「政治か」
「それに使っていたか」
「そうだった、自分の為には使わないでな」
 贅沢の為にはというのだ。
「そちらに浸かっていたんだな」
「そうだったんだな」
「あれだけ汚職して何に使っていたか」
「金を貯めてな」
「どうしているのかと思えば」
「そうだった、汚職自体はとんでもないが」
 それでもというのだ。
「自分の懐に入れないで政治に使ってることはな」
「ある意味見事だな」
「あの人も政治家だしな」
「それは成程となるな」
「そうだな、しかし汚職のことを書かれても動じないなんてな」 
 早見は山縣のことについても述べた。
「流石というか何というかな」
「伊達に元老じゃないな」
「日本を動かしている訳じゃないな」
「色々どうかと思う人だが」
「そこは凄いな」
「全くだ、だがああした人がいるとな」 
 早見はここで笑った、そして友人達にこうも言った。
「僕達の仕事のしがいがあるし日本もな」
「大丈夫だって思えるな」
「あれで政治は間違えない人だしな」
「ああした悪くても堂々として間違えない人が上にいるとな」
「いいものがあるな」
 このことはこの場にいた誰もが認めた、そしてだった。
 早見も他の者達も山縣のことを書いていった、それはほぼ全て批判的な記事だったが山縣はこれといって何も言わなかった。
 山縣有朋は兎角汚職の話が絶えず実際にかなり行っていた、だがその暮らしは自分で言う一介の武辺そのままに質素で見事な屋敷に住んでいても節度のあるものだった。汚職の金は政治に使い何かあると資
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