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俺様勇者と武闘家日記
第1部
ポルトガ〜バハラタ
ポルトガの関所にて
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 『鷹の目』とは、ナギの盗賊のスキルの一つで、遠くにある建物や町、ダンジョンがどこにあるかわかる便利な技だ。このくらいの距離なら、暗くても建物の内部まで把握できるという。
  ナギはじっと目を凝らして建物の様子を見た。
「……中は真っ暗で誰もいない。というか、中にも扉があるだけで、人が暮らしてそうな雰囲気じゃないな」
「そうか。なら今日はここで野宿するぞ」
  問題ないと判断したユウリは、ここで一晩過ごすことにした。建物に近づくと、周囲を警戒しながら外側の扉を開けた。
 中に入ると、ナギの言う通り目の前に扉がひとつあるだけで、他には何もない。扉の周りの壁にも窓ひとつないので、この奥に何があるのかもわからなかった。
「何だろうね、この扉」
「……一応、試してみるか」
 ユウリは先ほど使った魔法の鍵を再び取り出し、目の前にある年季の入った扉を開けようとした。だが、なぜか鍵穴は回らず、開けることができなかった。
「魔法の鍵でも開かないなんて……」
「ふん。俺たちの目的は今夜寝る場所だ。開かないのなら、ほっとけばいい」
 そう言うと、さっさと鍵をしまってしまった。切り替えが早いのか、それとも扉が開かなくて不機嫌になっているのか。
「寝るには狭いが仕方がない。すぐに寝る準備をして、明日の朝早く出発するぞ」
 ユウリの声に、各自野宿に必要な布や道具を荷物から引っ張り出し、屋外の時に使う簡易テント用の布を石造りの床に敷き詰める。残りの布は掛け布団がわりにし、皆固まるようにして横になった。
「おい、バカザル。もうちょっとそっちの方に詰めろ」
「何無茶なこと言ってんだよ! これ以上寄ったら身動きとれねえじゃねえか」
 端にいるユウリがナギを足蹴にしながら言う。
「手足が長いだけのサルなんだからどうにかしろ」
「あーそーだな。お前はそういう悩みがないみたいで羨ましいぜ」
「お前が無駄にでかいだけだろ。俺は平均的だ」
「もぉ〜っ! 二人ともうるさいよぉ! これじゃ寝られない!」
 二人が口喧嘩を始める中、シーラがガバッと起き上がり、不満の声を上げる。
「そうかぁ? 少なくともミオは平気みたいだぜ」
「へ?」
 シーラの気の抜けた声が私に向かって聞こえてくる。けれどすでに私は瞼を閉じ、この騒がしくも心地よい空間に安堵していた。久しぶりに実家で寝ているような、そんな暖かさを感じながら。

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