第三章
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これは川魚なのであたると危ないから親が食べさせないのだ。味自体は嫌いではないが。
「そう言うのね」
「ああ、来年は阪神の胴上げだ」
「どうだからね」
やはり千佳は最後まで負けていなかった、確かに黒田の引退は広島にとって痛いことだがそれでもだった。
来シーズンのカープに期待していた、だが兄の寿は彼の引退に来シーズンの阪神に希望を見出していた。
その中でシーズンが開幕した、寿は今年こそ阪神優勝だと笑顔で言っていたがそれでもシーズンが進むと。
阪神はそこそこ勝った、だが。
寿は甲子園球場から帰って千佳に言った、その時の試合は阪神広島戦で彼女は三塁側にいたのである。
「何でなんだ」
「今日もカープ大勝利だったわね」
「三試合連続でな」
「見事な三タテね」
「今年カープ弱体化するんだよな」
兄は妹に問うた。
「そうだよな」
「黒田さんいなくなったからね」
妹はリビングでお茶を飲みながら応えた。
「そうよね」
「その筈だよな」
「確かにね」
「戦力も精神的支柱も失ってな」
「カープ去年よりも弱いわ」
「それで何でなんだ」
寿はまたこう言った。
「今年も負け続けてるんだ」
「ただ負けてるだけじゃなくてね」
「惨敗だろ」
阪神から見ればそうなり広島から見れば大勝利だ。
「それも連敗でな」
「そうよね」
「どうしてこうなるんだ、他のチームにはそれなりに勝ってるのに」
「兄貴さん必死に監督やってるし」
「若手育ててな、巨人とかには勝ってな」
そしてというのだ。
「他のチームには勝つのに」
「それがカープだけにはね」
「こんなに負けるんだ」
寿には訳がわからなかった、それで言うのだ。
「一体」
「私にそう言われてもね」
どうかとだ、千佳は兄にクールに言った。
「もうあれ戦力差の問題じゃないでしょ」
「相性か」
「それの問題でしょ」
「それ言うとな」
どうかとだ、寿は難しい顔で言った。
「もうな」
「阪神はね」
「広島とは伝統的に相性悪いからな」
「そう、毎年勝ち越してるし」
「実はそうだからな」
「阪神ファンの人って巨人に目がいきがちだけれど」
おぞましい邪悪の化身、世を脅かす全人類にとって永遠の敵であるこのチームに対してというのだ。
「そりゃカープもだけれど」
「選手かなり強奪されてるしな」
「恨み骨髄だけれど」
千佳は覚えたての言葉も出した。
「けれどね」
「それでもか」
「多分阪神ファンの人達程じゃないわよ」
巨人への敵愾心はというのだ。
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