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燻製にしてみる
第二章

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「味噌や沢庵もな」
「おいおい、まさかと思うが」
「普段は味噌汁に入れたり味噌漬けに使ったりしてな」
「お味噌はだよな」
「沢庵は切って食べてるけれどな」
「燻製にするのかい」
「そうしてみるか」
 こう河童に言うのだった。
「ここは」
「味噌や沢庵が燻製にするのか」
「ああ、どうだ」
「そんな話は聞いたことがないぜ」
 河童は天邪鬼に眉を顰めさせて答えた。
「おいらはな」
「ああ、しかしな」
「思いついたのかい」
「そりゃおらだってインスタント食品や缶詰は燻製にしないさ」
 それはしないというのだ。
「野菜だって煮たり焼いたりして食べるさ」
「漬けものにしたりな」
「最近はハイカラにサラダにな」
 人間の料理を作ってみてというのだ。
「食べるさ、果物もフルーツポンチにしたりとかな」
「案外あんたもハイカラだな」
「切ってヨーグルトかけても美味いな」
「余計にハイカラだな」
「こういうのは燻製にしないさ、しかしな」
「思いついたのかい」
「今な、味噌は固めて沢庵はそのままにしてな」
 そのうえでというのだ。
「燻製にしてみようか」
「あんた本気かい」
「ああ、本気さ」
 その通りと言うのだった。
「だから家に帰ったらな」
「味噌と沢庵の燻製をか」
「ちょっと作ってみるぜ」
「やれやれだな、昨日はハムやベーコンを作ったってのに」
 西洋の料理を取り入れてだ。
「今度はそれかい」
「そうさ、それで出来たらな」
「ああ、食べてみてだな」
「感想も言うぜ」
「美味いのかね」
 河童は味噌や沢庵は幾ら何でも燻製にはならないだろうと内心思っていた、それで今回は失敗するだろうと思った。実は天邪鬼は燻製作りが趣味で得意にしても最初の頃は失敗もしていたのだ。河童は彼との付き合いが長いのでこのことを知っているのだ。
 だから今回は久し振りに失敗すると見ていた、そのうえで彼からの話を待ったが。
 何とだ、天邪鬼は彼に笑顔で言ってきたのだ。
「おらの家に来て食べてみてくれ」
「あのお味噌や沢庵の燻製をか」
「そうしてくれるか」
「悪戯じゃないのか?」
 妖怪の中でも捻くれ者の彼らしくというのだ。
「それじゃないか?」
「今回はそれじゃない」
 天邪鬼もそれは断った。
「だからな」
「それでか」
「ああ、今からおらの家に来てくれ」
「それで食べてみろっていうんだな」
「その通りだ」
 是非にという言葉だった、河童も彼の言葉はあまりにも強く嘘にも思えなくなったので行ってみた。それでだった。
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