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Fate/WizarDragonknight
我妻由乃
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「なあ。チノ」

 降ろした荷物から教科書を取り出し、学校の準備を始めたチノに、そんな声が来た。
 目の前には、活発な眼差しの小柄な少女がいた。短髪の少女で、チノと同じ見滝原中学の制服を着ている。

「マヤさん。おはようございます」
「『あ〜眠ぃ〜。昨日ココアとコーヒー銘柄当てなんてやるんじゃなかった〜』」
「違います。勝手に声充てないでください」
「違うのか? てっきりまたココアと付きっ切りだったのかと」

 少女がにっと八重歯を見せつけながら笑う。特徴的な彼女の八重歯は、ひそかに可愛がられる要素の一つなのだとチノは捉えている。

「住み込みの人が大怪我をして、看病してたんです」
「ほえ〜。大怪我って?」

 マヤという少女は、チノに顔をぐいっと近づける。彼女の顔面を押し返しながら、チノは答えた。

「昨日、見滝原公園でガス漏れ事故があったじゃないですか。その人、丁度公園にいたらしいんですよ」
「ひええええ……ついてなさすぎる……その人、大丈夫なのか?」
「ええ。父が医療の知識がありますので、心配ないです。ところで、なんですか? マヤさん」
「ああ、そうだったそうだった。あのさ。ウチらって、今十四歳じゃん?」
「私はまだ十三歳です」

 だが、マヤはチノのツッコミを無視した。

「私さ、今の私たちって大事な年だと思うのよ」
「青春真っ盛りですからね」
「ちっがああああう!」

 マヤはチノの机をバンバンと叩く。

「十四歳は! 世界を救う年だよ! 一生に一度しかないんだよ? だから、私たちは私たちで世界を救おう! 具体的には、ウチとチノとメグで! きっと、チノのバリスタの力が必要になるよ!」
「前も言いましたが、バリスタはコーヒーを作る職業です。それにしてもメグさん、まだ来ていないんですね」
「なんか、家族の用事で少し遅れるらしいぜ? さっき先生が言ってた」
「メグさんも大変そうですね。……メグさんといえば、またバレエやってみたいですね」
「私はそれほどでもないけどなあ……お? お前の隣、天野だったか」

 マヤは、チノの隣の席に座る人物に目を移した。
 たった今来た、男子生徒。四六時中ニット帽をかぶっており、周りから笑われようともからかわれようとも、常に携帯電話___それも今時珍しいガラパゴス携帯___にポチポチと打ち込んでいた。

「そうですよ。いつも携帯ばかりやってますから、あまり話したことないですね」
「隣の席なのに? 折角の機会だから、話しかけてみようぜ!」
「悪いですよマヤさん。天野さんは天野さんでやっていることあるみたいですし」
「でも、ちょっと覗いてみようぜ! 天野!」

 天野(あまの)幸輝(ゆきてる)。出席番号一番の彼に、マヤはポンポンと肩を叩
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