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Fate/WizarDragonknight
二つの黒
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足らねえってか?」
「でもあの人、完全にこっち向いてるよ」

 ウィザードが示した通り、キャスターはこちらへ注意をそらした。

「あれ? オレ別にこっちむいて欲しくてやったわけじゃねえんだが……」

 だが、そんなビーストのぼやきとは真逆に、彼女はこちらへ集中砲火を浴びせてくる。
 高度を下げて回避したウィザードだが、キャスターに近いビーストは遅れた。

「ぬわあああああああああああ?」
「何やってんだよ!」
『エクステンド プリーズ』

 ウィザードが発動した魔法陣に、手を突っ込む。伸縮自在の腕がビーストを地面に引き落とし、キャスターの光線を避けさせる。

「ぬわっ!」

何やら文句を言い出すビーストを下に見ながら、ウィザードは指輪を取り換える。だが、ハンドオーサーを操作する直前に、背中に圧が加わった。

「なっ?」

 哀れ指輪は光の雨の中へ落ちていく。ウィザードを踏んづけた黒い影ことアサシンは、そのままキャスターへ肉薄。

「葬る!」

 アサシンの刃と、キャスターの黒い防壁がぶつかる。黒い稲妻が走り、キャスターの体が落下した。

「……」

 肩に付いた埃を払い、キャスターはスタリと着地したアサシンを見返す。

「アサシンのサーヴァント……」
「お前はキャスターのサーヴァントだな……」

 黒い衣服と、赤い眼。外見の共通点がありながら、全く手を取り合うことのなさそうな二人は、じっと見つめ合っていた。

「待って!」
「お前は……」
「ランサー……」

 二人の戦いを止めようとする、三人目のサーヴァント、ランサー。響は、二人の間に割り入る。

「どうして戦う必要があるの? 私たちは、手を取り合って生きる選択肢だってあるはずだよ! 聖杯だからとかサーヴァントだからとかなんてどうでもいいでしょ?」
「それはお前だけだ」
 
 響の言葉に、アサシンは冷たく吐き捨てる。

「心残りがないのなら、この聖杯戦争から消えろ。私の生き永らえるという願いを消すな」
「生き永らえる……?」

 アサシンの言葉に、ウィザードもビーストとともに耳を傾けた。
 彼女は続ける。

「私は死んだ仲間たちと違って生き延びてしまった。だから、皆とは違って生き残る」

 アサシンの強い目線に、ウィザードは少し後ずさりをした。同時に、キャスターもまた口を開く。

「ランサー。貴女が願いを持たないというのなら、止めはしない。だが、私は願ってしまった。死の直前、もう一度主にお会いしたいと」

 顔に刻まれた、赤い幾何学模様。それをなぞる様に、彼女の目から、涙が伝う。

「我が主のために。我が分身たちのために。ここで、消え果なさい!」

 キャスターが掌を響たちへ向ける
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