第二章
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「父さんが見付けてきてな」
「保護したんだな」
「ああ、うちで飼うか」
「そうか、飼うんだな」
「反応薄いな」
「親父がそうしたいならしたらいいさ」
半分死んだ目での言葉だった。
「野良犬も保健所行くよりずっといいしな」
「命は救わないとな」
「御仏に仕えるならな、けれどな」
それでもとだ、健は言った。
「今はな」
「ああ、疲れてるな」
「ここんとこな」
「そうだな、色々あってな」
「正直どうしたらいいかな」
その疲れ切った顔で言うのだった。
「わからない位だよ」
「じゃあゆっくりしろ、とにかくな」
「これからうちで犬も飼うんだな」
「そうするからな」
その痩せ細った子犬を抱いての言葉だった、その子犬は。
「ウ〜〜〜〜・・・・・・」
「小さくて痩せてるのに唸るんだな」
健はその犬を見て言った。
「毛はボロボロだしかなり酷い目に遭ってきたのかもな」
「そうかもな、何があったかはわからないが」
父も言ってきた。
「それでもな」
「だったら大事にしてやらないとな」
「酷い目に遭った分だけな」
「ここに来たのも御仏のお導きだろうしな」
健は疲れきっているがそれでも穏やかな声で言った、だが犬はその彼を見て唸っているばかりだった。
犬は家族会議で健が英語で絆、家族とそれが出来ればいいということでボンドとした。そのボンドとだった。
健は一緒に暮らしはじめた、漫画を読んでもゲームをしても水泳をしても沈みきった気持ちは変わらず自分でもそれを何とかしたく。
気を紛らわせる為にボンドに餌をやり話し掛けたり家の中に入れてやったり散歩に連れて行った。だが。
ボンドは彼に中々懐かない、それで夏奈に言った。
「俺が一番散歩に連れて行ってご飯やってるのにな」
「全然懐いてないわね」
「ああ、何でなんだ」
苦い顔での言葉だった。
「親父にもお袋にも懐かなくてな」
「私にもね」
「それで俺にもな」
「やっぱりうちに来るまでにかなり酷い目に遭ったのよ」
それでとだ、夏奈は兄に話した。
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