三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第43話 許しては、もらえないのですか
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「俺にお願いする資格はないのかもしれません。ですが、母を許していただくことは……できないのでしょうか」
なんとかシドウはそう切り出したが、とても言葉に力は込められない。
シドウがまだ生まれる前。母親デュラはシドウの父ソラトの必死の懇願により、勇者一行による討伐を免れた。その後勇者一行のとりなしにより、巣の近くにあったペザルの民との和解が成立。それを全土の国・ギルドが追認するかたちとなっている。
しかしそれは、ウルカジャーニアがドラゴン族の襲撃で文字通り消滅≠オ、ドラゴン族による直接の影響を受けた町がペザルくらいしか存在しなかったことが前提となっていた。
ウルカジャーニアの生き残りがいたならば、すべてが覆ってしまうことになる。
「あなたの頼みでも、不可能です」
あまりにも予想どおりの回答。
シドウは焦り、母親のほうに顔を向けた。
しかしデュラはまぶたを閉じ、頭を小さく振った。
「この赤髪の人間の言っていたことについては、私も記憶は鮮明だ」
シドウは次に顔を向ける先を探し、視線をさまよわせた。
そして今さらながら一人、ここにいるはずの人間がいないことに気づく。
「そういえば父さんは。父さんはなんて言ってたのですか。姿が見えませんが」
「ソラトはいない。買い出しのために街に出ている」
シドウの父でありデュラの夫であるソラト・グレースは、不在。
母親のどこか安心した口調は、彼が巻き込まれなくてよかったと思ってさえいるのかもしれない。シドウはそう感じ、さらに焦る。
「もう説明はいいですね。さて、では始めましょうか」
アランの視線はふたたび母親へと向かう。
腰の剣は抜かない。半身の姿勢で手のひらを向けた。魔法を撃つ構えだ。
「ウルカジャーニアの生き残りとして、あなたを処刑――」
「あっ。待ってください」
「……まだ何か?」
「無理なお願いであるのは承知しています。それでもお願いします。母を許してください」
シドウはドラゴン態の長い首を垂れ、頭を下げた。
「不可能だと申し上げたばかりのはずですが?」
「そこをなんとか、お願いします」
「あなたにはなんの恨みもありません。ですが邪魔をするのであれば話は別です。まずあなたと戦うことに――」
まずあなたと戦うことに。
シドウの心臓が、ふたたび大きく拍動した。跳ねて飛び出すのではないかとすら思った。
思わず首を上げてしまったシドウの前には、アランの冷たい顔。
「――いや、戦いにはならないでしょうね。一瞬で私が勝つでしょう。脇で処刑をおとなしく見ていることをおすすめします。そうしていただければ、あなたにもティアさんにも危害は加えません」
「おとなしく見ているって……。そ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ