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駅ーRAILLOVE−
第一章

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                駅ーRAILLOVE−
 駅で待ち合わせ、聞こえはいいけれど。
 私が向かっているのは東京駅だ、よりによって日本で一番大きな駅だ。もうその大きさも行き交う人の数も相当なものだ。
 彼は新幹線から出張先の福岡から帰って来る、私はスマホで前日連絡を受けた時に思わず彼に言った。
「私のお家に来てくれない?」
「迎えに来て欲しいんだ」
 彼は笑って我儘を言ってきた。
「是非ね」
「あの、私も東京駅には何度も行ってるけれど」
 東京に住んでいて新幹線も使ったことがある、彼と違って東京に留まっている仕事なのであまり利用することはないけれどだ。
「それでもね」
「よくわかっていないとか」
「何度か位でわかる場所じゃないでしょ」
 東京駅はとだ、スマホの向こうの彼に返した。
「そうでしょ」
「そうかな」
「そうよ、本当に迷路みたいで」
 とにかく色々な場所があってだ。
「それで人も多くて」
「東京自体が人多いから」
「同じだっていうの?」
「うん、だからね」
「そういうことは気にしないでっていうのね」
「迎えに来てくれるかな」
「仕方ないわね、じゃあ駅になのね」
「そう、東京駅にね」
 まさにそこにというのだ。
「来てね」
「それで東京駅の何処に行けばいいの?」
 私は彼のお願いに折れた、それで仕方ないわねと内心思いながらそのうえで彼に言葉を返した。
「一体」
「東京駅の中じゃわからないかな」
「かなり不安よ」
 私は彼に正直に答えた。
「実際にね」
「そうなんだね」
「そう、だからね」
「すぐにわかる場所でなんだ」
「待ち合わせしたいけれど」
「じゃあ東京駅の前ね」
 そこにしようとだ、私は彼に言ってきた。
「そこでいいかな」
「あの赤い建物の前ね」
「そこならいいよね」
「ええ、あそこならね」
 どうかとだ、私は彼の言葉にスマホ越しに頷いて答えた。
「私もわかるわ」
「それじゃあそこの駅から出たらすぐ右手のところに」
「いればいいのね」
「そこにね」
「何で駅にこだわるかわからないけれど」
 彼がそこまで言うならだった、私も仕方ないと妥協してそこで待つことにした。それでだった。
 私は次の日仕事が終わるとすぐに環状線で東京駅に向かった、そして彼が言ったその東京駅から出て右手のところで彼を待つことにした。
 夜でも東京駅とその周りは人が多い、東京は不夜城とか言う人がいるけれどこの言葉が嘘じゃないとわかる。
 その東京駅のところで待っていると夜は暗くないし寂しくもない、幸い声をかけてくる胡散臭い人もいない。
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