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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
揺籃編
第七話 パランティア星域の遭遇戦(後)
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中尉にコーヒーを渡しながら尋ねている。…あ!私が淹れなきゃいけないんだった…。
「リンチの野郎が騙されたのさ。ウチが敵を発見した、リンチに報告がいく。そして奴はこう考えた。発見された敵は二百四十隻だ、でもこんな筈はない、二百隻程度の艦隊で帝国が攻め寄せる筈がない。他にも部隊がいる筈だ…」
「あ…」
「本隊から増援がないのはリンチの野郎がそう思い込んじまったからだ。俺たちは目の前で精一杯だが、警備艦隊司令官ともなると色々考える事が増えるからな、そう思い込まざるを得ない訳だ。その結果、ダゴン、ティアマトも探さなきゃいかん、ヴァンフリートもあるからアスターテから動けない…こうなる事を予想してやったなら、あの帝国野郎は大したもんだぜ」
「なるほど…。坊やはそれを見破ったと」
それが本当なら、すごい!やっぱりウィンチェスター兵曹はエリート下士官なんだわ!ペアでよかった!
仲良くしなくっちゃ!

 主任が頭を掻いている。風呂入ってないのかしら。
「リンチの野郎が勝手に思い込んだ結果、だと俺は思うがね。物事を悲観的に考えるとロクな事にならない、っていういい見本だな。まあ一番の原因は最前線が二千隻程度の艦隊でどうにかなると考えている奴がいることだろうな。弁護するのは癪だが、リンチの野郎はその犠牲者って訳だ」
「統合作戦本部長が悪いんですかい?」
「国防委員会さ」
「…主任も一応士官どのなんですねえ。あの会話だけでよくおわかりで」
「一応は余計だ」
「ところでなんですがね、リンチの野郎、リンチの野郎って…主任は司令官がお嫌いなんで?」
「嫌いだよ」
「何でです?」
「あいつ、士官学校の時の学年主任教官なんだよ。俺が士官学校3年の時だったな。当時1年生のパオラ…カヴァッリ候補生を口説いた事があるんだ。まさかリンチの義理の妹なんて知らないからな。無知って恐怖だと実感したな。それがバレてから、俺の成績が目に見えて悪くなったんだよ。それまで学年3位だったのに」
「なるほど…報復人事みたいなもんで。それにしても優秀だったんですねぇ」
「だから。一応とか、だったとか、やめてくれ。今でも優秀だぞ」
…みんな色々あるのね。早く彼氏探して寿退社しないと…。ウィンチェスター兵曹にアタックしようかな…。



4月21日04:50 エル・ファシル警備艦隊第2分艦隊、旗艦アウストラ、士官室
セバスチャン・ドッジ

 「内務長です、入ります」
そう言って旗艦内務長のカヴァッリ中尉が入って来た。彼女はリンチ少将の義妹だ。
二、三言しか話した事はないが、言葉の端々に聡明さが感じられた。優秀な人物の様だ。
その彼女が一人の下士官を伴っている。外見と階級からすると…下士官術科学校出身者か。
「さあ、ウィンチェスター兵曹、貴方の推論を話しなさい」

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