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俺様勇者と武闘家日記
第1部
カザーブ〜ノアニール
故郷にて
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「まだカザーブにつかないのか?」
 疲労と空腹で不機嫌度MAXの勇者が、さっきから不機嫌な顔で私を睨み続けている。
 ロマリアを出発してから今日で丸3日。そろそろカザーブにたどり着いてもおかしくない頃なのだが、普段余り慣れない山道のため、距離の割に時間がかかる。おまけに魔物も好戦的であり、この3日間魔物と遭遇したのは数知れず。おかげで私のレベルも2〜3上がってくれた。だが、レベル30のユウリがいなければ、おそらく倍以上の時間がかかっていただろう。
 ちなみに私がアリアハンに向かうためにカザーブからロマリアまで行った時は、ロマリアから来た馬車、それに兵士たちと一緒だったので随分楽な旅路だった。
 思えばこのとき少しでも兵士たちと一緒に魔物と戦っていれば、少しはユウリに文句を言われずに済んだんではないだろうか。
「えーと、もうちょっとで着くはずだよ」
「その『もうちょっと』を何回言ったと思ってるんだ!!」
 私の言葉に、ユウリはさらに声を荒げる。
「俺はお前らみたいな単細胞と違って、デリケートなんだ。今度その言葉言ったら次の野宿のとき一晩中見張りをやらせるからな!」
 私は夜通し一人で見張りをする想像をして、ため息をついた。
「はぁ……。なんでカザーブってこんなに遠いんだろ……」
 私の故郷カザーブは、山間に囲まれた小さな村である。つい十数年ほど前までは滅多に魔物も寄り付かない平和な土地だった。
 けれど、魔王が復活してから次第に凶暴な魔物が多く生息するようになり、今ではこの辺りを通る旅人や冒険者は度々魔物に襲われるという。
 もちろん村も例外ではない……はずであった。この村に救世主が現われるまでは。
 かの有名な英雄オルテガかと思われるかもしれないが、実は違う。むしろこの世界で彼の名前を知っている人は、おそらくカザーブ出身の者だけだろう。
 そして、彼の名を知る数少ない人間の一人が、何を隠そうこの私である。
 ……って言っても、そんなことを聞いてくる人なんていないんだけど。
 とにかく何が何でもカザーブに着かなければ。などと決意を固めていると、
「ねーねー、ミオちん! あそこに屋根が見えるよ!!」
 シーラの一声に、私の瞳に光が宿った。
 うっそうと生い茂る木々の間から小さく見える、数十軒の家。私は思わず歓声を上げた。
「間違いない、カザーブはもうすぐだよ!」
 私の声に、他の三人は安堵の表情を浮かべる。私も一晩中見張りをやる羽目にならなくて良かったと心底安心した。
村の入り口に近づくと、一人の男性が手を振ってきた。
「ミオちん、知ってる人?」
「うん。村の自警団の人だよ」
「なんだ、ミオじゃないか!! 久しぶりだな!!」
「デルバおじさん、久しぶり! 村に変わりはない?」
「当たり前
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