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君と過ごす夏

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「オルター! 早くー!」

 海だ、ビーチだ、と駆け出していった女の後をのんびりと追う。波打つ水面も空も青々としていて絶好の日和であるが、正直なところ気温も高ければ砂浜も熱い。誘いをかけてきたのが彼女以外なら、一も二もなく断っているところだ。

「ほら、オルタも入ろ! 気持ちいいよ」

 すぐ傍まで辿り着くと、わざとらしく頬を膨らませながら腕を取られた。引かれるがまま大人しく澄んだ汀に足をつければ、生ぬるい流れと泡が纏わり付いては引いてゆく。

「……焼かれるよりはマシか」

 素直な感覚を述べるも不満げな様子。何が不服だと聞き返して初めて視線がかち合った。顔ごと背け誤魔化そうとするところを阻み、強引に此方へ向けさせれば観念したようだ。

「だって、その、――かっこよくて直視できない!」

 頬を紅く染め叫ばれた意味を一拍遅れて理解し、溜息が溢れた。告白じみた言葉を発したことで体温が上がったのか、女の首筋にきらりと滴が光っている。舐め取った舌で、相反するはずの塩気と僅かな甘みを転がした。全く、眩しくて仕方がない。
 陰の身でありながらと自嘲したとて、気に入っていることは事実だった。未だ羞恥に震える女の白い首筋をやんわりと食めば響く奇声に、どうしてか満たされる気がした。




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