暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン20 独善たる執行者たち
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 その日の朝は、これまでとは何かが違っていた。すべてを否定され揺れていた鳥居浄瑠(とりいじょうる)の精神はかつての先輩への襲撃を経て限界を迎え復讐へと舵を取り、糸巻太夫(いとまきだゆう)は犬猿の仲である巴光太郎と不承不承ながらに手を組んだ、そんな日。
 そしてその日は、ある少女にとっても何かが変わるきっかけとなる日であった。少女の名は、八卦九々乃(はっけくくの)。デュエルモンスターズのタブー視とほぼ時を同じくして生まれ育ち、それでもなおカードを愛する少女である。
 しかし、そんな予兆が最初からあったわけではない。その日の朝は、少女にとってはいつも通りの朝だった。

「ではおじいちゃん、行って参ります!」
「ああ、楽しんでおいで」

 店の奥から帰ってきた叔父の声に満足し、元気いっぱいにドアを開けて青空の下に躍り出る。その手には愛用の通学カバンが握られ、その中では密かにいつも持ち歩いている携帯用デュエルディスクが揺れる。
 少女はそもそも、この町の住人ではない。もともと両親と住んでいた町の学校が「BV」によるテロ行為によって文字通りに崩壊し、急遽叔父の住むこの町にやってきたのである。無論その地域にもデュエルポリスは存在したのだが、対応の遅れや担当の実力不足といった要因が重なり合ったせいで被害を食い止めることができなかった形になる。
 そしてそれが、少女が糸巻と出会うほんの3日前のこと。それから3か月も経たないほどの短い期間ではあったが、持ち前の人懐っこさとその明るさで少女はすっかりこの町に順応していた。

「あ、八卦ちゃん!」
「おはようございます、竹丸さん」

 飛び出した少女の姿にふんわりと花が咲くような笑顔を向けたのは、茶髪を三つ編みに編んだ丸眼鏡の少女。八卦にとっては、この町に来てから初めてできた友達でもある。

「うん、おはよう」

 そういって差し出された手を、少女もまた手を伸ばし握り返す。そうして雑談しながら通学するのが、ここ最近の少女たちの日常風景だった。といっても、別に大した話をするわけではない。テレビ番組、最近読んだ本、宿題、共通の友人……その時だけ笑って楽しい時間を共有したらそれっきり、もう思い出すこともないような他愛もない話。
 しかしその日は、ほんの少しだけ毛色が違っていた。興奮気味に彼女が切り出した話は、少女にも無関係とは言い難かったのだ。

「ねえねえ、八卦ちゃん。知ってる?今この町に、デュエルポリスの偉い人がフランスから来てるんだよ。ほら、1か月ぐらい前にニュースでやってた、フランスの銀行をたった1人で摘発したっていう鼓さん」
「え、ええ……」

 知っているも何も、つい先日には一緒にケーキまでご馳走になった仲である……とは、さすがに言い出せなかった。少女は、自身がデュエリス
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