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Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
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、スミレは私を前後にぐらぐら揺さぶった。さすがにこれは、頭がくらくらする。

「ツグミ!目を覚ましてええ」
「もう、そんな大袈裟な……」

 今度はべったりと抱き着いてくるスミレをなだめつつ、私はヤヨイに助けろという目線を送った。言い出したのはヤヨイなのに、私のヘルプには全く応じず、ヤヨイは楽しそうに笑っている。
 薄情者め……!

 スミレを剥がそうと苦戦していたとき、教室の外の方から私を呼ぶ声が聞こえた。今の私にとっては助け舟である。

「ツグミー」
「あ……アオイ」

 慌てて腰をあげると、スミレは渋々といったように離れてくれた。急いで声のした方へ向かうと、アオイは手を振って私を促す。

「どうしたの?」

 といっても、アオイがここにやってくることは珍しくない。なにか借りにくることもあれば、ただ話しにくることもある。私とアオイは、定期的に話さなければいけないのかというような頻度で、学校だったり家だったり、お互いなんとなく会いに行くのが普通だった。

「大丈夫だったか? 昨日」
「うん、大丈夫だった。無傷だよ」

 腕を広げて怪我のないことをアピールすると、アオイは安心したように笑った。

「じゃ、今日一緒に帰ろうぜ。話聞かせてくれよ」
「うん。……あ、それならうち来ない? 本物の犯行現場で再現してあげるよ!」

 警察の検証は昨日のうちに終わっていた。第一、痕跡がなさすぎて、調べるところがなかったらしい。

 私が意気揚々とそう言うと、アオイは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに眉間に皺を寄せて、困った顔になった。

「あー、ごめん……今日、婚約相手の親に会う約束してて……早く帰ってこいって言われてるんだ」

 軽い気持ちで誘ったことを後悔した。断られるにしても、こんな理由で断られるのは嫌すぎる。そういうことは極力聞きたくなかった。

「そ、そうなんだ! それなら、帰り道に全部話すね!」

 傷ついたのを誤魔化すように、無駄に明るく返事をした。わざとらしすぎたかもしれない。

「ごめんな。じゃ、終わったらここ来るから」
「うん、待ってる」

 なんとなく気まずい雰囲気のまま別れると、アオイが見えなくなったのを確認して、私は思わず盛大にため息を吐いていた。スミレたちのところへ戻り、椅子に座ったなり机に突っ伏す。スミレとヤヨイが怪盗キッドについて話しているのを聞きながら、私はまたため息を吐いた。

「……いっそのこと、どこかにさらってくれたらよかったのに」

 昨日の夜のことを思い出して、小さく呟く。どうせ今のまま、私もお見合いをして違う人と結婚するなら、どこかに消えてしまったほうがマシだ。

「……こりゃ、アオイくんが原因ね」

 スミレが言った言葉には聞こ
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