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Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
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「んー……」

 ふと目を開けると、あたりは真っ暗だった。

 あれ……私、なにしてたんだっけ……?

 ベッドから起き上がって、時計を見る。午後九時を回ったところだった。
 そのまましばらくボーッとしていると、部屋の窓が開いていることに気づいた。カーテンが揺れている。窓を閉め忘れていたのだろうか。
 そう思い、窓を閉めようと立ち上がったとき、強い風が入ってきてカーテンが開いた。いきなりのことで驚いたのと、風が思ったよりきつかったのとで、私は思わず目を瞑った。

「えっ……」

 次に目を開けたときには、目の前に人が立っていた。その人はそのままさっとしゃがみこむと、私の右手をとってそっとキスをおとす。

「お会いできて光栄です、お嬢さん」

 様になった立ち振る舞いに、私はぽっと?を赤らめた。微笑を浮かべて私を見上げる姿は、かっこいいとしか言いようがない。

「??予告通り、あなたの心を盗みに参りました」
「ほ、本物……」

 白い帽子に白いマント。煌々と輝く月の光が、彼を照らしている。今日のお昼、スミレに言われた通りの姿だった。完全に、この人は本物の怪盗キッドだと確信する。
 窓から入ってくる風に吹かれて、白いマントがひらひら揺れている。差し込む月明かりが白い衣装を照らして、彼そのものが輝いているように見えた。

「ど、どうやって入ってきたの?」

 今日私が帰ってきてからのここの警備体制は、私が驚くほど万全だったはずだ。私の部屋の周りは当然、家の周りもぐるりと囲っていたし、門の外にも警官がいた。そんな状態では、窓から入るのも不可能に近かっただろう。それなのに、悠然と、余裕の表情で現れたこの人は、そんな警備をかいくぐってきたようには見えなかった。

 恐る恐る尋ねると、彼はゆっくり立ち上がって、にこりと微笑んだ。

「申し訳ありません。マジシャンは、マジックのタネを明かしてはなりませんから」

 私は耳を疑った。昨日、別荘の庭園で言われたのと同じ言葉だ。

「あなた、もしかしてあのときの……」

 目を見開いて驚く私を見て、彼はいたずらっ子のように笑った。ポケットからハンカチを取り出すと、昨日見せてくれたように右手を覆う。そして、掛け声とともにさっとハンカチをとってみせた。

「わっ、キレイ……!」

 彼の右手に握られていたのは、白い薔薇の花束だった。小さめではあるが、昨日の記憶から一輪の赤い薔薇が出てくると思い込んでいた私には、充分予想外で驚いた。
 すっと目の前に差し出された花束を、私は目を輝かせて受け取った。

「すごい、ありがとう! 私、久しぶりにわくわくしちゃった」
「お褒めに預かり光栄ですよ、お嬢さん」

 そう言って、彼は軽くお辞儀をしてみせた。嬉し
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