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Episode.「あなたの心を盗みに参ります」
本編
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れて……帰ってきたときには、家の周りにたくさんの警官が張り付いていたのだった。

 警察の人と話をして、やっと自分の部屋に帰ってくると、急に疲労感に襲われた。こんなに大事になるとは思っていなかった。私は今でも、いたずらでカバンに入れられただけの、偽物の予告状だとしか思えない。

 警察の人には、私の部屋にまで入らないよう、お母さんがお願いしてくれたらしい。さすがに、夜まで知らない人に囲まれているのは嫌だったので、ありがたかった。
 だけど、警察の人たちが怪盗キッドを捕まえたくて仕方がないのは当然のことで、部屋の前にはたくさんの見張りが立っている。何かあったらすぐ呼ぶようにと、何度も言われた。

 ベッドの上で一息ついていると、傍にあった携帯が音を鳴らした。着信の通知だった。

「……もしもし」
「もしもし、ツグミ。今大丈夫か?」
「うん、大丈夫だけど……どうしたの?」

 電話を寄越したのは、幼い頃からの馴染みで、同じく私のようなお金持ちの家に生まれた、隣の家に住むアオイだった。

 アオイとは、小さい頃からずっと一緒にいる。隣の家に住んでいたし、お互い外で遊ぶのが好きだったから、いつのまにか仲良くなっていたらしい。毎日一緒に遊んで、色んなところに行って、二人で同じ経験をして、二人で成長した。子供の頃は、ずっとそうだった。
 だけど、私たちの家はなぜかお互い仲が悪く、関係こそ子供の頃から変わらないけど、なんとなく両親に気まずさを感じるようになっていた。仕事上で考えると、ライバル企業なんだそうだ。
 私とアオイが仲良くすることについて、両親が何か言ってくることはない。それはアオイの家も同様だった。それでも、そういう雰囲気を感じ取っていた私たちは、離れることも近づくこともなく、同じような関係をずっと続けてきていた。

「怪盗キッドから予告状が届いたって本当か?学校ですごい話題になってたぞ」
「うん、本当。……なんか、すごい騒ぎになってるみたいだね」
「な。お前、大丈夫なのか?」
「うん、なんとか大丈夫」

 心配して電話してくれたのだとわかって、心臓がじんわりあったかくなる。自然と笑顔になるのを自覚しつつ、携帯から聞こえる声に耳を傾けた。

「なにを盗むって予告が来たんだよ?」
「うーん……それが、よくわかんないのよね」
「え、なんで?」
「予告状には『あなたの心を盗みに参ります』って書いてある」
「はあ?なんだよそれ……」

 アオイは驚いたような声を出したが、少し笑っているようだった。やっぱり、なにかのいたずらだとしか思えない文章である。

「キッドは人を殺めることはしないって話だけど……気をつけろよ?なんかされるかもしれないし」

 心配そうな声色でそう言うアオイに、私は笑って返事をし
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