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教会の狼男
第四章

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「そうしていましたが」
「あの、ですが」
「ですが?」
「メイクそのままですよ」
「メイクとは」
「狼の」
「えっ、まさか」
 ここでだ、神父は。
 神父の服のポケットから鏡を出して自分の顔を礼拝堂の月明かりの中で見て仰天して叫んだ。
「しまった、酔っていて夜の姿にならない様に気を張っていなかった」
「あの、夜のとは」
「神父は嘘を言ってはならない」
 神父は急に真面目な顔になって述べた。
「では正直にお話しましょう」
「はい、何でしょうか」
「私は夜に狼人になってしまうのです」
 神父は畏まって美里そして文彦に話した。
「そうなってしまうのです」
「狼男ですか」
「そうです、職業は神父ですが」 
 それでもというのだ。
「代々の遺伝で」
「遺伝ですか」
「何でも百年前の祖先が狼の足跡に溜まった雨水を森で冗談で飲んだら」
「その水を飲めば狼男になりますね」
 ここで文彦は言ってきた。
「そうしたお話もありますね」
「そうしたらなりまして、幸い月の夜も気を張っていると変身しないので」
 そうした体質でというのだ。
「親しい人以外にはばれずに過ごせていますが」
「今は、ですか」
「失敗しました」
 文彦に口惜しそうに述べた。
「これは」
「そうですか」
「はい、ですがお二人共私が狼男でも恐れないですか」
「狼って人襲わないですから」
 文彦は神父にあっさりと答えた。
「ですから」
「そうよね、ニホンオオカミって人の後をついてくるけれど」
 美里も言ってきた。
「人は襲わないのよね」
「狼自体がそうですよね」
「だから犬にもなったのよね」
「そう考えますと」
「別に狼男でも」
「人を襲わないですね」
「人を襲う。馬鹿な」
 神父はそのことを頭から否定して述べた。
「私は間違っても。まして神に仕える身です」
「だからですね」
「何があろうともです」
「人を襲わないですね」
「そうしたことは」
 絶対にというのだ。
「ないです」
「そうですよね」
「そうです、確かに私は狼男ですが」
 それでもというのだった、神父も。
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