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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
第三話 大迷宮
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戒さしている。

「擬態しているぞ! 周りをよ〜く注意しておけ!」

メルド団長の忠告が飛ぶ。その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

団長の声が響く。光輝たちが相手するらしい。光輝と雫が囲もうとするも道が狭くて上手くいかない。龍太郎は肉壁としてなんとか食い止めている。

龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

直後、

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

前衛の動きが止められてしまった。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

「チッ!」

俺はエアガンを構える。そのまま発砲した。

ドパンッドパンッドパンッ!!

速攻で三体を倒す。

「時止!」

さらに時を止め、ギリギリまでロックマウントを殲滅する。最後の一体を残して全滅した。

「時は動き出す‥‥‥厨二病臭いや」

独り言を言いながら、最後の一体を思いっきり殴る。ロックマウントは後ろの壁を突き破ってどこかに飛んでいった。

「やれやれ‥‥‥」

「やるなあコウ。時止便利すぎだろ」

「ゼロ時間転移しているようなもんだからな」

「特に技能もなしでできるって凄えな」

「あ、なんだかんだで止められる時間も延びたな。15秒ぐらいかな?」

「おいおい‥‥‥そんなにあったらタイマン無敵だろ」

いつものように三人で雑談する。その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。中々に綺麗だ。

「ほぉ〜あれはグランツ鉱石というものだ。あれ程のサイズの物は珍しいな」

「素敵……」



 香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。千秋や若芽もうっとりとしている。というか女子全員だ。ああいう鉱石を誕生日プレゼントなんかでもらったら一撃で落ちるなと思った。

その時‥‥‥‥

「だったら俺らで回収しようぜ!」

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。
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