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架空戦記〜東洋海戦争1941〜
第十五話「謁見」

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「ミリアよ。待っていたぞ」

謁見の間の中央までくるとそのまま片膝をつき頭を垂れたミリアに年老いた、だが強烈な覇気を纏った声がかけられる。

「はっ!お久しぶりです。父上」

「うむ、そなたも壮健でなによりだ」

ミリアの父、第百六十二代皇帝モルドガ・ヴァン・ヴェイル・デッセンダーグは皇帝としての顔の中に僅かな父性を混ぜて接する。ここが公式の場であることを理解しているミリアは少し不用心と思いつつも不器用な父の態度に心の中で笑みを浮かべる。幸い幼少期から礼儀作法を叩きこまれたミリアはその感情を表に出す事は無かった。

「…陛下、私はこれより第二東洋艦隊、第三東洋艦隊、第一西洋艦隊、第四空母機動艦隊を率いてイハワ王国へと進軍いたします」

「うむ、仔細は聞いている。許可しよう。勝てとは言わん。これだけの大艦隊だ。葦原皇国やアビン合衆国も出てこよう。その中でいかに敵に打撃を与えるかを考えよ」

「はっ!」

皇帝の言葉にミリアは深々と頭を垂れる。

神星ルドワ帝国では敵を侮る事は愚か者と劣等人のやる事と思われている。自らを神星人と呼び他種族を見下しているがそこに侮りはない。

「見下しはすれど侮りはせず」。これを実際に実行し機能させているからこそ神星ルドワ帝国は世界の敵(パブリック・エネミー)となりながらも互角以上に戦えている所以であった。

「情報局は敵の戦力をどの程度と判断している?」

皇帝の言葉に左右に控えていた者の中から一人が中央に出て最上位の礼をする。

「情報局のカイル・リデリーです。今回の目標はイハワ王国です。なので距離のある葦原皇国は多くても一艦隊、距離が近いアビン合衆国は空母機動艦隊も含めた主力艦隊を、イハワ王国は全艦隊を投入してくると考えています」

「ふむ。…ミリアよ」

「はっ!」

「情報局はそう言っているが我が軍は敵に勝てるのか?」

皇帝はそう言う。暗に策はあるのであろうな?という圧をミリアは感じていた。

「勿論です。空母機動艦隊には例の艦載機を運用させます」

「ほう、あれ(・・)か」

皇帝は一月前に見た艦載機を思い出す。

「更に主力艦のみですが最新鋭の機器を詰め込んでいます。その運用も乗員に叩き込みました。被害は出れど負ける事はありません」

「作用か。ならば良し」

皇帝はミリアの言葉を信じ作戦の実行の許可を出すのであった。

この数日後、第三皇女ミリアを司令とした連合艦隊が神星大陸を出航。イハワ王国へ向けて南進を開始した。時に統合歴1941年9月10日の事であった。

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