第1楽章〜覚醒の伴装者〜
第12節「戦う君への小さな応援」
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刹那響く無常の中で雑音斬り裂く刃あり。
風に靡く腰上まで伸ばした長髪と、頭頂部から左寄りの位置で纏めたサイドテール。
絶刀・天羽々斬に選ばれし歌姫の名は、風鳴翼。
人々を守る為にその身を剣と鍛えた、現代の防人である。
「弟にも、生弓矢にも、一切の手出しは許さん!」
刀を中段に構えると、地面を蹴って一気に距離を詰める。
眼前のノイズを一突き。続けて後方より迫るノイズを袈裟斬りにし、更にもう一体を斬り上げる。
颯を射る如き神速の刃。その軌跡の麗しさは千の花のように。
剣の輝きは、宵に煌めく残月の如く。並み居るノイズらを永久の浄土へと還してゆく。
しかし、美しき剣閃を描く彼女には、同時に苛烈さが溢れている。
そんな彼女の姿は戦場の華か、或いは慟哭に吼える修羅か。
雫を流せる場所を失った片翼の歌姫は、自らを奮い立たせる誇りだけでなく、亡き友との思い出さえも一振りの雷鳴へと変え、災厄を薙ぎ払う。
「翼さん……そうだ、私、一人で戦ってるわけじゃないんだよね!」
自らの背中に立ち、無双の刃を振るう先達の姿を見て、響は昨日の夜、翔から贈られた言葉を思い出す。
『一人で抱え込もうとするな!もっと……もっと周りを頼れ!』
「周りを頼る、か……。それなら、私は皆に頼る!」
後方のノイズは翼が押さえ込んでいる。
黒服達はそれぞれ車を降り、輸送車のコンテナを開く作業に入っている。
上空でこの状況を見守っている司令の弦十郎は、ヘリを合流地点へと飛ばすように指示を出しており、二課本部からは藤尭、友里の2人がバックアップしてくれている。
そしてコンテナの中では、聖遺物の入ったケースを手にした翔が待っている。
なら、彼女の役割はただ一つ。目の前の壁をブッ壊し、進むべき道を作る事だ。
胸の傷跡に手を添えて、立花響は歌い始める。
彼女に生きる力を与えてくれた人から受け継いだ歌を──。
「──Balwisyall Nescell gungnir tron──」
光が彼女の身体を包み込み、撃槍の力を宿す橙色の装束を形成する。
腕を包むのは厳つい手甲、両脚を覆うのは黒い足鎧。
撃槍・ガングニールのシンフォギアを身に纏い、立花響は眼前の災厄を見据える。
その拳を握り締め、敵へと向かって行くその前に響は通信を繋ぐ。
相手は言うまでもなく翔だ。コンテナの中にて、外部の状況を端末に送信されてきた情報と通信のみで把握し、今か今かと自分の出番を待つばかりの少年に、彼女は自らの役目を告げた。
「翔くん!私が道を切り拓く!だから翔くんは、その隙に走って!」
『立花……戦うつもりなのか?』
「翼さんに比べたら、
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