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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン11 鉄砲水の襲撃者
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「だいたいだ、この馬鹿!」
「すみませんでした、お姉様……」

 時刻はすでに、完全な夜。今なお明かりの灯る非常灯が照らす緑色のわずかな光とそれ以上の圧力を持った圧倒的な暗闇の中には、3つの人影。そのうちひとつはうっすらと埃の積もる床に正座し、ひとつはその影を上から見下ろすようにいらいらと動き回りながら立っている。最後のひとつはそんな2人からはやや距離を取り、適当な机に腰かけて暇そうに足を揺らしていた。
 それが誰である、などとは問うまでもない。正座して甘んじて説教を受ける八卦とその説教の主体である糸巻、そして適当な段階でフォローに入ろうと様子を窺う鳥居である。結局先ほどまでこの場所にいた2人のテロリスト……朝顔と夕顔のコンビに逃げ切られた彼女らは、いまだ痛みと疲労から体の動かない少女の元へと事情を聴き出すために戻ってきたのだった。
 自らの自由を賭けたアンティデュエルと、その結末。開いた口が塞がらない思いでその話を聞き終えた彼女たちは、わずかな沈黙ののち……こうして、説教の時間が続いている。

「確かにアタシも不注意だった。そもそもこの幽霊騒ぎの地図、アタシに渡したのの他にコピーがとってある時点で八卦ちゃんも正直、どっかで1回は来る気満々だったってことだもんな。それに気づけなかったのはアタシの責任でもある」
「は、はい……」
「はいじゃない!」
「わあ理不尽」

 いかにもやる気なさそうに入れられる鳥居の茶々に気勢を削がれながらも、目の前でしょぼんと座り込む少女を改めて見下ろす糸巻。この忠犬のような少女に尻尾が生えていれば、今はべったりと地面に垂れ下がっているだろうことは容易に想像できるだろう。

「今回は確かに、八卦ちゃんが勝ったかもしれない。だけどな、勝負なんて所詮は時の運だ。どれだけ実力差があろうとも、絶対に勝てる相手なんてどこにだっていやしない。まして八卦ちゃんの今日の相手は、道は違えどアタシと同じその道のプロだったんだろ?どれだけ自分が危ない橋渡ったのか、頭冷やしてもう1回考え直してみな」
「はい……」

 しょんぼりとうつむく少女。そんな彼女の頭に、糸巻の大きな手がポン、と優しく置かれる。

「え?あの、お姉様?」
「はい終わり、ここまでがデュエルポリスとしてのアタシからの話。で、だ。こっからはデュエリスト、糸巻太夫として話をしようじゃないの。まず、アタシから言えることはひとつ……よく頑張ったな、八卦ちゃん。さすが、アタシの妹分だ」
「お、お姉さ……」

 ぐるりと殺風景な廃図書館の内部を見渡し、その頭を撫でる手に力がこもる。おずおずと見上げた先の見たこともないような優しい微笑に、少女は自分の頬が意図せず熱くなるのを感じた。

「『BV』は初めてだったんだろ?しかも、こんなひとりぼっちの場所で。
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