暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン10 熱血!青春!大暴走!
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と早かったが、おおむねこんなもんだ。巻の字には見つかるとめんどくさい、とっとと帰るぞ夕顔。と、そうだ。最後に嬢ちゃん、ひとつ伝言を頼まれてくれないか」
「伝言、ですか?」

 相変わらず起き上がることもできないまま、どうにか首だけを傾けてそちらに視線を向けて見上げる。すでに日は沈んでいるにもかかわらず付けっぱなしのサングラスに隠れその目の中の感情を窺うことはできないが、男はああ、と頷いた。

「巻の字に伝えといてくれ。信じようが信じまいが勝手だが、今回の幽霊騒ぎに俺らは一切関与してないからな。むしろ誰の仕業なのかがかわからねえから、こうして調べてこいなんて上に使われてんのよ。んで今回俺らは、嬢ちゃんとのアンティに負けたから大人しくこの件からは手を引かせてもらう。協力する気はないが邪魔する気もないから、まあデュエルポリスの方で頑張っといてくれ、ってな。ほれ行くぞ、夕顔。そろそろ巻の字なら焦れて踏み込んでくる」
「応!さらばだ少女よ、俺とお前の熱血魂、もし縁があればまた会おう!」
「はっ、やめてやれよ夕顔。嬢ちゃんにとっちゃ、俺らとなんざもう会わない方がいいに決まってるさ。じゃあな嬢ちゃん、いいデュエル見せてもらったぜ」

 その言葉を最後に2人は身を翻し、糸巻の怒声が聞こえた方向とは反対側へと姿を消す。彼らの気配を感じられなくなってからわずか数秒後、どたどたと足音を響かせながら怒り狂った赤髪の夜叉が戦場の跡へと飛び込んできた。

「アタシを無視たぁいい度胸じゃねえか、その喧嘩買っ……八卦ちゃん!」

 荒っぽい言動とは裏腹に、踏み込むや即座に閲覧室全体のクリアリングを行う糸巻。そんな彼女が真っ先に目にしたものは閲覧室の真ん中にある明らかに人為的に机や椅子をどけて作られた不自然な空間と、その中央で倒れ込み彼女の方へ向き直ろうともがいている少女の姿だった。

「ちょっと糸巻さん、だから踏み込むの早いですって!施設封鎖もまだ終わってないんすよ!?」

 遅れて飛び込んできた鳥居もまた、倒れた少女と駆け寄る女上司の姿を目にする。
 そして、肝心の少女はといえば。見慣れた2人の顔を見て、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか。自分は助かったのだという実感が、ようやくその身に湧き上がったのか。堪えきれないほどの感情がその小さな胸のうちでいっぺんに爆発し、その視界がにじむ。息が詰まり、呼吸が熱くなる。
 ……そして。

「う、うぐ、ううう……」
「おい、八卦ちゃん?」
「う、うわーーん!お、お姉様ー!ごべんなざい、わだし、私ーっ!」

 軽々と自分を抱き上げた赤髪の豊かな胸にしがみつき、普段の彼女らしくもなく全力で泣きはらすのだった。
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