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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
思いと想い
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でお終い」


しっかりと読んどいてね──と言い残し、リビングへと戻る。
本当にキンジは自分のことに鈍感だ。見ている方がつまらない。それならいっそ、後押ししてくっついてもらった方が簡単だ。白雪はキンジを好いているし、キンジも白雪のことを悪しく思ってはいない。好条件だとは、思うけれどもね。


「……どうなるのやら」


何がなしに呟いた。それに呼応するかのように、内ポケットに入れておいたケータイが通話着信を知らせる。宛先は──非通知。
受けるべきか暫し悩んでから、その通話を開始した。


『如月彩斗くん──だね? 少しばかり君に頼みがあるのだが』
「……頼み?」


受話器から聞こえてきたのは、若々しい男声。若い男にしては大人びた、それでいて、何かしらの威圧感を内包している声色。
それを聞き留めてから、その男の素性と彼の『頼み』とやらの内容を模索する。実に奇っ怪な要件だ。


『神崎・H・アリアくんに関する話なのだが、聞いてくれるかい』
「それは内容次第だね」
『なぁに、簡単なことさ。君には彼女を守ってくれさえすればいい。何事からもね。そうだね──報酬は前払いで、100万』
「っ……」


それなりの額で俺に『アリアを守らせようと』する彼は──いったい、何者なんだ。アリアを守るのは容易だ。だが……何の為に? その真意は? それが分かりさえすれば良いのに……。
推論を組み立てても見えない彼の真意に、焦燥が募る。前髪を掻き上げていることに気がついたのは、痛覚のおかげだ。


「お前は……何がしたい?」
『彼女のことが気にかかっているだけさ。だからこそ、現段階で彼女にいちばん近い存在であると予知した君に……僕はこうしてまで、連絡を寄越したのだがね』
「この話、信用して──いいんだね?」
『あぁ、勿論だとも』
「なら──承諾しよう」


彼の声色の表層にも裡面にも、虚言らしきものは見えなかった。むしろ真実の、それも何かしらの好奇心が見え隠れしている。アリアに対する好奇心。それと彼とに何の関連があるのかは定かではないが、話の限り第三者の監督が必要なのだろうか。


『交渉成立だ。報酬は後日に君の口座に振り込んでおくよ。詳細を教えてくれたまえ。詐欺ではないから安心して欲しい。……ふむ、了解した。夜分に邪魔して申し訳なかったね。それでは、僕はそろそろお暇するとしようか──』
「……待て。お前は──誰だ?」


僅かな間が空いた。その静寂は、すぐに打ち破られたのだが。


『僕のことかい? そうだねぇ……《教授(プロフェシオン)》とでも覚えてもらおうか』


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