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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
誰が為の世界
災厄の前兆
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、如何にも心地の良さそうな朝を演出していた。


「さて……」


心地の良さそうな朝に加えて、さぞ心地の良さそうな寝顔を見せている同居人は、一向に起床の気配を感じさせなかった。あと10秒して起きなかったら無理やり起こそうかな……などと考えているうちに、既に10秒は過ぎている。胸の内で軽く謝っておいてから、右脚を大きく振りかぶった。


「さっさと起きて。来てるよ、君の幼馴染」
「だから、って……それはない、だろ……!」


蹴り落とされた腹部を片手で押さえながら、どうやらキンジはこの疼痛に耐えかねているらしかった。眉を顰めているのが恨めしげな表情にも思えたが、単に睡魔と闘っているだけだろう。
……どちらにせよ武偵校で殴る蹴るは日常茶飯事だし、そもそも来訪人が来たのに、起床の気配すら見せないのが悪いのだ。


「十中八九、キンジ目当ての幼馴染が来たのにさぁ……。そうでなくても、来訪人が来た時点で起きなかったのが悪い。目的は俺かキンジかのどちらかなんだから、せめて起きようよ。これは致し方なしの制裁ってことにしておくから。ね? 分かったらさっさと起きてください。早く来てね。白雪が待ってるよ」


言いたいことは言うだけ言った──胸の内につっかえていた靄も、どうやら消え去ったみたいで安心したね。
キンジの寝室を抜けると、そこには白雪が所在なさげに呆然としていた。さては、事の終始を聞いていたのだろうか。……申し訳ないのは、どう考えてもこちら側なのだけれど。


「……悪いね。取り敢えずは上がっておくれ」







「「いただきます」」
「お粗末なものだけど、良かったら召し上がって」


来訪人の白雪を招き入れ、キンジも素直に起きてきたところ──自分が途中まで作っていた朝食は、白雪のお御飯のせいと言おうかおかげと言おうか、余り物として保存されることとなった。
リビングのテーブルに所狭しと並べられた重箱の中身は、まさに豪華絢爛とも呼べるものだ。白雪が作ったとは分かるものの、まぁ流石に、ここまでくると朝食のレベルではない。

何で伊勢海老とタラバ蟹がメインで入ってるの。というか、その他も高級食材ばっかりじゃない。流石にこれを朝食として食べるのは惜しい気がする。せめてお夕食にしません……?
──という感情は、自分もキンジも同じらしかった。


「……いいのか、これ。本当に食べちゃって」
「勿論ですっ。そのために作ったんだよ?」
「悪いな、白雪。ありがとう」
「そんな……えへへー」


キンジと白雪は、やはり幼馴染なのだ。会話の遣り取りの端々に、本当に気心知れた、ある種のらしさが見え隠れしている。特にキンジは女子と関わることが少ない。そんな中で白雪と仲良くし
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