暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン7 傾国導く闇黒の影
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。一番右端にはすでにカードが置かれている……おそらく、最初に不意打ちを仕掛けてきたモンスターの物だろう。そして「BV」により彼の周囲に一斉に実体化したのは、計4体の白面金毛を持つ美しい妖狐……鬼火とともに現れる9の尾を持つ大妖怪、九尾の狐。それらが一斉にその尾をゆらりと持ち上げ、振り下ろされる槍の嵐のように彼女めがけてその先端を突き刺しにかかった。

「こんのリアリストが、舐めてんじゃねえ!」

 ここで彼女が並のデュエルポリスであれば、自身のデュエルディスクが放つ妨害電波がなぜ通用しないのかを理解する暇もなく串刺しの肉片となっていただろう。しかし彼女は少なくとも並ではなく、なによりも目の前のこの男のことをよく知っていた。おきつねさまが動くということは、なんらかの勝算あるいは理由があるときに他ならない。しかし1体につき9本、合計36本もの鋼鉄のように鋭く尖った尾からはいくら彼女の身体能力をもってしても逃れきれないだろう。そこで彼女が見出したのは、自身のデュエルディスクだった。咄嗟にどれともつかぬカード1枚を手に取り、モンスターゾーンに置く。理由はわからないが、あの「BV」はこれまでの物とはわけが違う。ならば、当然その恩恵は彼女も受けることができると踏んでのことだ。果たして彼女の目の前に、腐肉に鬼火を纏う黒き竜が現れる。

「来な、真紅眼の不屍竜(レッドアイズ・アンデットネクロドラゴン)!」

 開いた口から体内に蓄積された腐敗ガスを煙草の煙めいて吐き出しつつ、堕ちた竜がその腐肉にへばりつく鱗で36本もの九尾の尾を弾き返す。ギリギリの賭けではあったが、彼女のカードもまた「BV」処理を経て一時的な実体化に成功したのだ。
 そして訪れる、一時的な膠着。先にカードを引っ込めたのは、巴の方だった。

「はいはい。仕方ありませんね、実力で片付ければいいんでしょう?」

 面倒そうに肩をすくめて5枚のカードを回収してポケットに入れ、代わりに自らのデッキを取り出してデュエルディスクに改めてセットする。それを見た彼女も攻撃を防いだ真紅眼の不屍竜を取り出し、再びエクストラデッキに裏側で戻す。彼がカードを引っ込めた隙に真紅眼に攻撃させれば、確かにこの一件のすべては終わるかもしれない……しかし彼女がそれを良しとしないことは、お互いに知り尽くしている。彼女にとってカードは断じて殺人の道具などではなく、そのために「BV」を利用することはデュエルポリスの道を選んだ彼女の全てを否定することに他ならない。
 それがわかっているからこそ、彼もわざと彼女の目の前で隙を作るような真似をしてみせたのだ。口先だけのくだらない綺麗事に囚われて最も合理的な手段をとれないでいる彼女にその矛盾を突き付け、嘲笑うために。

「おう、余計なことしてないで初めからそうすりゃいいんだ
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