暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン7 傾国導く闇黒の影
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に、その火事場の馬鹿力は1度しか保たないだろうとも読んでいた。プロ時代の全盛期ならいざ知らず、普段の相手がプロデュエリストからそこらのチンピラに格下げされたことで勝負勘の鈍りつつある今の彼女に2度も3度も奇跡を起こすだけのスタミナは残されていない。先のターンを耐えきったその瞬間、彼の勝利はほぼ揺るぎないものとなった。それが、今の彼女と実際に戦ったことで彼が得た結論だった。

「さあ、アタシのターンだ。もたもたしてたら夜が明けちまう、そろそろ終わりにしようぜ」

 そんな分析など知る由もなく、デッキトップに力を込めて指をかける糸巻。そして、このデュエルの最後の流れを決定づけるドローが……。

 ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 しかし、そのカードが引かれることはついになかった。夜の闇を引き裂くような音の不快な警告音が3度鳴り、盤面に異常が起きる。スターヴ・ヴェノムが、九尾の狐が、シャドウトークンが……それだけではない。糸巻の張った輪廻の陣、そしてアンデットワールドとシャドウ・ディストピアがいびつに混じりあった空間が、すべて絵の具をぶちまけたようにぐちゃぐちゃになってひとかたまりに溶け崩れていく。

「な、なんだ!?」
「ふむ。フィールド2種を常に維持し続けたうえであの数のモンスターを「BV」による同時展開を異常検知と判断しての安全装置の強制展開……なるほど、確かにこの試作品にはまだ負荷が強すぎましたかね。こんな形での中断とは私にとっても不本意ですが、いい実戦データが取れたので今回は良しとしておきましょう。ですがその前に、九尾の狐!」

 主の声に応えた九尾の狐が、その全身を溶かしながらも槍の尾のうち2本を同時に伸ばす。糸巻めがけ飛んできたそのうち1本は辛うじて身をひねり躱したものの、彼女のバイクを狙い撃ちにしたもう1本はどうすることもできない。愛車がスクラップになるさまに気を取られた彼女がわずかに巴から目を離したすきに、彼の姿はもう公園から消えていた。

「ふざけやがって、何勝手にケツ捲って逃げてやがる……!」
『ああ、そうそう。ひとつ大事なことを伝え忘れていましたよ』

 どこからともなく、エコーのかかった巴の声が響く。反射的にあたりを見回そうとして、すぐにやめる。どうせどこかにスピーカーでも仕掛けてあるのだろう、ならばそれに踊らされるのも物笑いの種になるだけだとの判断である。彼女の脳は実際、ようやく効いてきたニコチンと勝負を途中で捨てられた上にその相手を取り逃がした自分へのあまりの怒りのせいで逆にぞっとするほどに冴え渡っていた。その彼女の理性が、この話は聞いておくべきだと訴えかける。

『鳥居浄瑠君、でしたか?ああ、否定はしなくて構いませんよ、もう完全に調べはついていますので。まったくやってくれましたね、まさか客席ではな
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